babyco編集長。書籍編集者。
新潟の山奥で肉用牛を飼育しながら、野菜やくだものを育てる祖父母のお手伝いをきっかけに、丹精込めて作られた食材のおいしさ、食べることや命の大切さを学ぶ。特集記事、離乳食やママごはんなど幅広く担当。ママ・パパの気持ちに寄り添った記事の制作を心がけている。
babyco vol.57の特集「パパの産休・育休」では、babycoママ・パパの声を中心に取り上げました。ですが、もう少しパパのリアルな声を聞き出したいところ…。そこで、パパ代表として2名の先輩パパにお話を伺っていきたいと思います!
お二人目は、パパ料理研究家としてオンラインの料理塾を毎週末開催している滝村 雅晴さん。よく「パパが作る料理は気合いが入り過ぎている!」なんて、ママごはんとパパごはんのギャップを感じることがありますが、滝村さんの場合は、家族がよろこぶと思って開催したホームパーティーをきっかけに、“家族のための料理”と“趣味料理”の違いに気づいたのだそうです。
ゆとりうむプロジェクト理事。株式会社ビストロパパ 代表取締役。食育、男女共同参画、WLB(Work Life Balance)、働き方改革を、男性の家事料理参画から推進する日本で唯一のパパ料理研究家。家族がともに食事ができることは当たり前ではないことを世に伝え、食卓の笑顔を増やしている。
編集長(太田):滝村さんは、ゆとりうむプロジェクトという活動のなかで“家事の負担を減らして家族時間を増やすための取り組み”をされていますよね。
ママの家事負担が多いご家庭によく見られるのが、料理をはじめ、家のことは全部ママひとりでがんばっているような状態。こうした状態にならないためにも、産休や育休中に家事分担のイメージをつかんでおけると、産後の生活がバタバタしないのかなと感じたのですが、産休・育休中から夫婦でやっておくといいことは何でしょうか?
滝村さん:まず前提として、料理に関わらず“コミュニケーションをたくさんとっていること”が大切かなと。
ゆとりうむプロジェクトで調査したデータで、パートナーとコミュニケーションがとれている人ほど、家事のストレスが低かったり、楽しいと感じていたりする人が多い傾向にあったんです。
ぼくはパパ料理研究家として活動していますが、こんな仕事をしているぼくも、子育てはまったく未知の世界。どんなに父親のマインドになろうとしても、「出産して子育てをする」っていう母親の、本当に命がけだったりする想いをほとんどのお父さんは理解しにくい。まずスタートラインが違うのでね。
なので、父親になるためには妻の話を徹底して聞くこと。話をさえぎらない、ダメ出しをしない。そういう風にして話を聞くことをして、その上でどういう分担にするか?という話にもっていくのがいいと思いますね。その辺のコミュニケーションで、上からマウントを取らないっていうのが大事なんじゃないかと。
滝村さん:役割分担についてですが、ぼくの立場として料理に限ってお話ししますね。私たちの食事は、1日3食として、1週間に21回食べる機会があります。分けてみるとこんな感じ。
【A】平日の朝(5食)
【B】平日の昼またはお弁当(5食)
【C】平日の夜(5食)
【D】休日の朝・昼・夜(6食)
まずは、この【A】平日の朝、【B】昼、【C】夜、【D】休日のごはん作りを誰がどうやるか?の分担を考えてみましょう。
大人用なのか、子ども用なのか。平日が難しくても作りおきならできるんじゃないか。分担決めをリードするのはママかもしれないけど、「こういう風に作ってほしいから、離乳食の作りおきをお願いね」と話し合う。そのこと自体が、すでに夫婦のコミュニケーションになっているんですよね。
ただ、分担することも大事なんだけれど、「これはおれの役割じゃないから」とスルーするのは言語道断! 子どもがおなかを空かせて泣いているのに「なんか泣いてるぞ」って言ったりするのはNGです。
役割分担がきっちりできたら、次は役割“判断”のマインドにしていきましょう。「自分がやったほうがいいな」と思ったら、相手に確認せずにアクションを起こしていけるっていうのが、役割分担を決めた次にやってほしい家事のコミュニケーションです。
編集長(太田):【A】平日の朝、【B】平日の昼、【C】平日の夜、【D】休日の朝・昼・晩という分け方は、滝村さんが実践されたことなんですか?
滝村さん:夫婦の仕事のスタイルや役割って、その都度変わるじゃないですか。パパ料理研究家になる前はこんなの全然やっていなかったんですが、今はどこでも仕事ができて、料理をするのが楽しくできているので、【A】【C】【D】+作りおきがぼくの担当です。妻は、昼のお弁当作りを担当しています。
以前は作る日と作らない日があったり、今も出張で全国に行っているときは作れなかったりするので、その都度変えていっていいと思います。
編集長(太田):滝村さんも、お互いの働き方を見ながら「こういう風にしていこうか」とその都度話し合って、今のスタイルになったんですか?
滝村さん:結果的には話し合っていなくて、先ほどの役割“判断”になった感じです。家族の時間も長いので、それぞれがあ・うんの呼吸で判断できるようになっていきました。
ぼく、最初は【D】しかやっていなかったですから。朝も昼も作らず、夜もなかなか帰ってこない。休日なら自分の趣味で料理を楽しめるから、脂っこいものばかり作って、片付けもせずお酒を飲んで酔っ払って寝るっていう。
ある日、家でホームパーティーを開いて片付けせずに寝たら、翌朝に妻がすごく怒っていて。そのときにはじめて「料理って洗いものもするんだ!」って気づいたんです。
滝村さん:そこから、料理にもTPOがあるんだとも気づきました。ぼくはずっと「趣味の料理」を作っていたんですね。車が好き、ゴルフが好き、アウトドアが好きなのと一緒。それを家庭に持ち込んでいたから、妻に迷惑がられたんですね。
あと、夫婦での料理の家事分担は6つに分けられるんですが、ぼくは3番(調理シェア)しかしていなかった。ぼくは「料理」をしていたんじゃなくて、「調理」を楽しんでいたんです。高い肉もいっぱい買ってきていたから、2番(買いものシェア)も楽しんでいたかな。
失敗をたくさん経験して、「料理っていろんな形があるんだよ」「料理の家事分担ってこう分けられるんだよ」っていうのをだんだんわかっていったぼくのように、パパたちにも気づいてほしいなと思いますね。