babyco編集長。書籍編集者。
新潟の山奥で肉用牛を飼育しながら、野菜やくだものを育てる祖父母のお手伝いをきっかけに、丹精込めて作られた食材のおいしさ、食べることや命の大切さを学ぶ。特集記事、離乳食やママごはんなど幅広く担当。ママ・パパの気持ちに寄り添った記事の制作を心がけている。
わが子のためのファーストトイ、1歳や2歳の記念のおもちゃ。子どもの笑顔やよろこぶ姿を思い浮かべながらおもちゃを選ぶ時間は、ワクワクしますよね。
でも、実際に買って与えてみたらすぐに飽きちゃったり、種類が多くて何を選んだらいいのかわからなかったりすることも…。
子どもが楽しく遊べるための、おもちゃ選びのコツをお話しします!
慶應義塾大学文学部教授・赤ちゃんラボ主宰。乳幼児〜思春期の言語獲得、社会認知能力の発達とその脳機能などの研究を行う。著書に『リズムでタッチ あかちゃんえほん けろ けろ ぱくっ!』など。
うちの子がよろこぶおもちゃって何だろう? と悩んだら。次のポイントを意識しながら選んでみましょう。
商品パッケージに「対象年齢」という記載があるように、おもちゃは、月齢や年齢ごとの認知機能や運動機能の発達を考えて作られています。
子どもによって、五感の発達や運動機能の進み具合はさまざまなので、対象年齢はあくまでも目安と考えるといいですが、おもちゃ選びで参考にするには大事な情報です。
ママやパパが「飽きちゃったのかな…」と思っていても、じつはお子さんは飽きているのではなく、まだ難しくて、遊び方がわからないだけの場合もあります。子どもの成長に合ったおもちゃを選ぶと、子どもがそのおもちゃで楽しく遊べるんです。
この、“楽しい!”というポジティブな気持ちが、赤ちゃんの成長にはとても大切なんですよ♪
おもちゃで遊んで楽しい気持ちになると、子どもの心のなかには、探究心や好奇心がうまれます。遊び方や、おもちゃへの興味がどんどん広がっていくんですね。
月齢や年齢に合ったおもちゃ選びも大切ですが、お子さんが楽しく遊べているかどうかをよく見てあげましょう。対象年齢より先取りしてもいいでしょうし、遊ぶにはもう幼いかもと思っても、楽しんでいるなら遊び続けていいと思います。
0〜7歳以上(一番多いのは0〜3歳)のお子さんがいるbabycoママに、おもちゃ選びのポイントや持っているおもちゃの種類を聞きました。
もっとも重視しているのは「安全性」。赤ちゃんは何でもくちに入れて確かめますから、くちに入れたりなめたりしても安全な素材かどうかは、大事なポイントなのもうなずけます。
次に重視しているのは「子どもの発育・発達タイミング」に合っているかどうか。4番目の「おもちゃの対象月齢が子どもの月齢と合っている」も、子どもの成長を見ながらおもちゃを選びたいと考えるママが多い証拠ですね。
3番目は「価格」。おもちゃは安い買いものではないので、親としては後悔したくない! 6番目の「対象月齢・年齢が幅広い(長く使える)」も、価格と関係していそうです。
一度気に入ったおもちゃで飽きずに遊んでもらえたら、お財布にはやさしい…。「価格」という回答が多いのは、最近の、ものの値上がりの影響も受けているのかも。
ファーストトイとして一番選ばれているのは「メリー」。ねんねの時期でも、ゆらゆらとゆれるおもちゃを眺めたり、あんよで蹴ったりして楽しく遊べるのがうれしいですよね。モノをつかむという練習にもなります。
2番目は「ぬいぐるみ・人形」。ぬいぐるみのふわふわした手ざわりは、赤ちゃんが安心する存在。やさしい手ざわりに癒されるママも多いみたいです。
1ヵ月記念、2ヵ月記念…と子どもの成長記録を撮るときに、ぬいぐるみを活用するママも。ぬいぐるみと並べて記念撮影することで、すくすく大きくなっていくわが子の姿を楽しんでいるのだとか。
ほかには、ラトル、ボールなど、子どもがにぎにぎして楽しめるおもちゃもランクインしました。
ファーストトイには、寝転がりながらでも遊べるおもちゃ、軽くて赤ちゃんでも握ったりつかんだりして遊べるおもちゃが人気なようですね。
ファーストトイでも人気の「ぬいぐるみ」「ボール」が、定番おもちゃとしてランクイン。音の鳴る、楽器遊びができるおもちゃも人気のようです。
ミニカーやおままごとセットは性別を選ばないものの、男の子人気、女の子人気で分かれているのかもしれません。
また、注目したいのは教育的なおもちゃ。英語、かずなど、幼児や小学生の習いごとでも人気の教育ジャンルのおもちゃが入ってきています。ママやパパのなかで、遊びながら学べるおもちゃへの興味が高まってきているのかも。
小さな子ども向けのおもちゃには、
● 色がカラフルなもの
● 音が鳴るもの
● ふわふわ、ぷにゅぷにゅなどいろいろなさわり心地のするもの
などがありますよね。
色や音、手ざわりに工夫をこらしているのは、赤ちゃんの発達に大切な”五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)”に刺激を与えて、発達を促すためなんです。
例えば「視覚」。
0歳の赤ちゃんの視覚は近眼のような状態で、上手にピントを合わせることができません。そのため、色のコントラストを強くしてあげると、赤ちゃんが見分けやすくなり、形などの把握もしやすくなります。
子ども向けのおもちゃにカラフルなものが多いのは、目でとらえやすく、興味を引く存在だからなんですね。
赤ちゃんが目でとらえやすく、興味を引く存在といえば「赤ちゃんに人気のキャラクター」もあります。
人気キャラクターの顔をよく見てみると、目や鼻が大きかったり、ほっぺの色がはっきりしていたり、パーツがシンプルだったりしますよね。これは、パーツを強調することで、赤ちゃんにも見やすく工夫しているんです。
赤ちゃんたちが人気キャラクターのおもちゃに夢中になるのも、こうしたワケがあるんですね。
また、おもちゃは、子どもが世界の法則を知るきっかけにもなります。
例えばママやパパの目の前に、おもちゃのガラガラがあるとします。振ると、やさしくてきれいな音が鳴りますよね。
赤ちゃんは、この“自分が振っているから音が鳴っている”という法則に、はじめは気づくことができないんです。私たち大人にとっては、とても新鮮な気持ちですよね。
まだガラガラを振るのがやっとな赤ちゃんには、「自分と他者」という関係性がありません。ガラガラをくり返し振ることで、自分がガラガラを振る→音が鳴るという法則に気づいていきます。
そして、日常生活にはない世界を疑似的に体験させてくれることも、おもちゃが子どもにとって大切な存在である理由です。
体が大きくて近寄れないゾウやクマだって、ぬいぐるみでならぎゅっとふれあえます。資格がないと乗れない消防車やパトカーだって、ミニチュアの車なら消防士や警察官になりきることができます。
おもちゃを通じて日常ではできない体験をすることは、子どもにいい刺激をたくさん与えて、世界を広げるきっかけになるんです。
おもちゃには、子どもの五感の発達を促す工夫がたくさんほどこされているというお話をしました。ですが、五感のほかにも、子どもたちはおもちゃ遊びを通じていろいろな力を伸ばしていくことができるんです。
ボールやつみきなどのおもちゃ遊びは、「掴む」「並べる」「つむ」といった手指の動きの発達や空間認識能力がはぐくまれます。
2〜3歳くらいになると遊び方がわかるようになるパズルやブロックなどのおもちゃ遊びは、小さなパーツを掴むことで手先の器用さが鍛えられたり、数の認識といった算数の学習につながる力が伸びたりします。
また、ぬいぐるみやお人形などを使った「ごっこ遊び」「見立て遊び」のおもちゃ遊びは、子どもの心の発達にとてもよいとされています。心の発達とは、他者の気持ちを理解してあげたり、優しさや思いやりをもったりすることですね。
子どもというのは、2〜3歳頃までは「自分が思ったものは、他人もそう思っている」「自分が見たものは、他人にもそういう風に見えている」と考えるところがあります。
例えば、子どもの目の前で「○○さんと△△さんがお散歩してるよ〜」と2体のぬいぐるみを横切らせるとします。
1体のぬいぐるみがもう1体のぬいぐるみの後ろにきたとき、「○○さん(後ろのぬいぐるみ)から見えている、△△さん(手前のぬいぐるみ)はど〜れ?」と、正面、後ろ、横を聞きます。
すると、子どもは自分から見えている“正面”を選んだりするのです。
今のおさんぽの例は、他者がどう見ているか? 見えていないか? の視点のお話のように感じますが、相手の気持ちがわからないというところに結びつきますよね。
「自分とお人形は違う考えを持っていて、今、このお人形はこういう風に思っている」と見立てられるのは、子どもにとって、かなり高い能力なんです。人の気持ちを考えて行動するって、大人でも、なかなか難しいですから。
よく、ごっこ遊びをしながら「よしよし」「大丈夫?」などと声をかけてあげている子がいますよね。それは、ぬいぐるみやお人形にも”心”を感じて、優しくしてあげたいというあたたかい気持ちが芽生えているのでしょう。
「おもちゃで遊びながら、何て声をかけたらいいのかわからない」「つみきをつめないのはどうして?」など、子どもとのおもちゃ遊びで悩む場面ってありますよね。それにはしっかり、理由と遊び方のコツがあります♪
知ると子どもとの遊びがもっと楽しくなる、おもちゃ遊びのコツと豆知識をお話しします。
「つみきをつんでお手本を見せてあげても、上手につめない」「どうしてつめないのかがわからないから、遊び方がわからない」といったお悩みをママやパパから聞きます。
大人ならラクラクとできる“つむ”という作業は、0歳の赤ちゃんには結構大変な作業です。なぜなら、ものをつむ能力以前に、掴む能力が未発達なんですね。
さらに掴むより難しい能力が、ものを意識的に離す(リリースする)能力です。1歳になっても、意識的に離すのが難しいお子さんもいます。
ものを掴む
↓
掴めたら、次は自分で手を伸ばして掴む
↓
手から離すことができるようになる
↓
つむ作業ができるようになる
というステップを踏んでいくので、最初からつみきがつめないのは当たり前。「うちの子はどうしてできないんだろう」と不安に感じなくても大丈夫ですよ。
つみきは、つみき同士をぶつけてカチカチと音を鳴らしたり、掴んだり、並べたり、親子で「どうぞ」と渡し合ったり、ママやパパがつんだものを崩したりと、つむ以外の遊び方もたくさんできます。
月齢にあったシンプルな遊び方から始めてみましょう。
「自分が子どもの頃にごっこ遊びをしなかったから、遊び方がわからない」「ごっこ遊びをしながら、何て声がけをしたらいいのかわからない」というママ・パパは少なくないようです。
ごっこ遊びのコツは、「おなかがすいたな」「うれしいな」「悲しいな」など、ぬいぐるみやお人形の心や体の状態を言ってあげることです。
みなさんは、普段の会話で「○○してもらってうれしいな」「○○されて悲しいな」と、感情を言葉にしていますか? あまり言葉にしていない方が多いのではないでしょうか。
感情を具体的に言葉にすることは、他者の気持ちの理解にもつながります。とくに、他者の気持ちがわからない子どもに対して感情的な言葉を使ってあげると、「うれしいってこういうことなんだ」と、子どものなかでの理解が進むきっかけにもなります。
ごっこ遊び中の声がけに悩んだときは、
・ぬいぐるみやお人形の気持ち(うれしい、悲しいなど)を言葉にする
・ぬいぐるみやお人形の体の状態(空腹、ねむいなど)を言葉にする
を参考にしてみてくださいね。
ママやパパが声をかけても振り向かないくらい、ひとりで遊ぶことに夢中になっているときってありますよね。
ひとり遊びに熱中している時間は、お子さんのなかで集中力や想像力などの大切なものが芽生えているとき。割り込まずに、そっとしてあげるのがいいでしょう。
ですが、子どもは親のすることを見て、真似て、学習していきます。
親御さんが遊び方のお手本を見せてあげるのも、子どもの学習にはとてもよいことです。タイミングをうかがい、ひとり遊びが終わってママやパパと遊びたがっているように見えたら、いっぱい遊んであげてくださいね。
イラスト:Tulippa
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