元高校教員で、現在はフォトグラファー・ライター。 3歳の娘を育てる父で、子どもの顔写真を毎日撮影するプロジェクトを実行中。 ブログ『23時の暇つぶし』 では、娘の成長記録をパパ目線で発信。
赤ちゃんの目がいつから大人と同じように見えるかをご存知ですか?
前回の連載で『知識が増えることで赤ちゃんの小さな変化がわかり、子どもの成長を感じられるようになる』と書いたので、今回は赤ちゃんの視力の発達過程と、視力がまだ発達していない赤ちゃんにわかりやすい関わり方について、教員経験を元に書きました。
後半には、赤ちゃんの脳を刺激する遊び環境づくりも紹介しますね。
元高校教員で現在フォトグラファーの僕が、パパの目線から子育てについて考えていく連載『宗玄さん家の普通だけれど特別な日々』。
第9回目は、「赤ちゃんの視力と見え方」にスポットをあてて、視力の発達していない赤ちゃんとどうやって関わったり遊んだりすれば効果的かを考えていきます。
視力は赤ちゃんの発育に欠かせない五感のひとつですが、産まれたばかりの赤ちゃんは目がほとんど見えていないという話を聞いたことはありますか?
そうです、新生児の視力は0.01くらいで、ほとんど見えていません。色も黒・白・グレーしか認識できていないと言われています。
それでは、いつ頃から赤ちゃんの目は見えるようになるのでしょうか?
そして、目が見えない赤ちゃんが外の世界に興味を高めるには、どのような工夫をすればいいのか?ということについて特別支援学校で働いた経験をもとに、【特別支援教育×子育て】の観点からお伝えしていきます。
※ 特別支援学校では、子どもの年齢に関わらず、発達段階に合わせた学びや遊びを教えています。それぞれの子どもに合った方法で学びを伝えるため、生徒が今どの発達段階で、どうすれば情報を感じ取りやすいかを見極め、その子どもに合った方法で伝える教育方法なんです。
これを赤ちゃんに当てはめると、赤ちゃんが今どの成長段階で、どう情報を提示すればわかりやすいかを見極め、どう関わればより情報を得やすいかを考えるのが【特別支援教育×子育て】の観点です。
▶参考:視覚発達支援センター(視覚の発達)
▶参考:BAUSCH+LOMB(赤ちゃんの目)
新生児視力は、ひと月の中でも発達とともに変化していきます。
生後1週間くらいでゆっくりとした動きに反応するようになると言われています。
しかし、この時期はまだ動く被写体にはなかなかついていけません。なので、赤ちゃんと関わるときは、ゆっくりと顔を近づけてみると赤ちゃんにも見えやすくなります。
生後2週間で赤ちゃんが反応しているのが感じられるようになり、生後6週間くらいで動かないものを見られるようになることから、大きなおもちゃなどを見つめるようになります。
色に関しても、少しずつ色も認識できるようになっていき、赤色が最初に見えるようになると言われています。
また、生後3ヶ月くらいになると、左右に動くものを目で追うようになってくるので、頭上におもちゃを吊るしたりすると反応するようになります。メリーにも今まで以上に反応するようになる時期です。
宗玄さん家でも、娘の頭上に音のなるおもちゃ(メリー)を吊るすと、ジタバタとしながらよく反応するようになりました。
こういったおもちゃは、遊びだけでなく、脳への刺激から成長にも繋がると言われています!
生後3ヶ月頃の赤ちゃんは視力がまだ未発達ながらも、動くものを頭を動かしながら目で追ったり、明るい色のおもちゃも見えるようになります。
4ヶ月頃から、自分の手を認識し、だんだん目と手の感覚が合ってきて、あそこにあるものを触りたいと実際に目で見たものに手を伸ばして触れる『目と手の協応』が起こってきます。
「協応」とは、異なる器官や機能が協力し合って、かみ合って働くこと。
協応【キョウオウ】
知覚系と身体運動系の協調によって知覚とこれに基づく行動の結果がよく対応し環境に適応的となる場合,知覚 = 運動間に協応(知覚 = 運動協応 perceptual-motor coordination)があるという。また視・聴・触など各感覚様相(モダリティ)間の調和・一致という知覚系内の感覚間協応(intersensory coordination or harmony)と,身体各部間の動作の協調という動作系内の運動間協応(motor coordination)もある。また個々の協応には順応性・随意性・反射性などの点で違いが生じる。
引用:広辞苑無料検索
さて、『目と手の協応』が起こるとどうなるでしょうか?
目と手の協応が始まると、見たものに手を伸ばすようになります。つまり、おもちゃを赤ちゃんの手の届くところに置いておくと、そこに手を伸ばして触ろうとしたり、掴もうとするようになるんですよね。
そうなると、「あれを触りたい!」「もっと遊びたい!」と、脳が刺激を受けて、自発的な行動がより芽生えるようになります。
これは特別支援学校ではよくやる手法で、脳性麻痺で体が思うように動かない生徒でも、近くにおもちゃがあることを認識することで、可能な範囲で手を伸ばしたりすることがあります。
また、目が見えにくい生徒でも、音や感触の刺激に対して好奇心を高め、物を探すような行動をします。
「ここにおもちゃがある!遊びたい!」と感じることで、脳が刺激を受けることがあるんですよね!
だから、3ヶ月くらいから頭上におもちゃを吊るしたり、触ると音の鳴るおもちゃを枕元に置いておくといいですよ!
実際に我が家でも、子どもの右腕の届く範囲にスズの音が鳴るおもちゃを吊るしておくと、子どもが認識するようになり、不器用ながらも右腕を大きく動かしておもちゃを鳴らすような行動が多く見られるようになりました。
赤ちゃんの目がだんだんと見えるようになってくると、目に見えたものや音の鳴るおもちゃに反応して手を伸ばし始めるようになります。
手に持ったら握ったまま離せなくなったりすることもあって(握るほうが離すよりも簡単な動作なんですよね)、ずっと握っている姿が可愛くて笑ってしまいます。
一人で遊ぶようになって自分の世界を広げていく時期なので、子どもが一人で刺激を受けながら遊べる環境を整えてあげるといいですよ!
<成長に合わせた赤ちゃんの遊び事例>
生後6週間ごろ
・赤ちゃんの視界に入りやすい位置で人形遊びをする
生後2ヶ月〜
・絵本の読み聞かせ
生後3ヶ月〜
・手の届く位置に音のなるおもちゃを置く
生後4ヶ月〜
・カシャカシャと音の鳴る感触おもちゃを握らせる
・うつ伏せ姿勢で手を伸ばしたところにおもちゃを置く
我が家では、赤ちゃんが握りやすく設計されたおもちゃや、音が鳴るおもちゃを手の届くところに置いておくと、自分で掴んで振り回していました。
ふいに離したようで、おもちゃが顔に載っていることも…(笑)
もちろん、自分ではまだ取れないので、おもちゃがずっと顔の上にのっていました。
うつ伏せをイヤがるお子さんも多いかと思います(娘もそうでした)が、好きなおもちゃを目の前に置いておくと、背筋を使って顔が上がって姿勢を保つことができたりします。
そのときに、タオルをくるんで胸と床の間に入れてあげると、赤ちゃんが背中を使って姿勢を保ちやすくなりますよ!
しばらくすると苦しくなって泣き出したりすることもありましたが…。
人形を使って関わり合うのもいいですよね。
ちなみに左に写っている布は妻が妊娠中に自作した感触遊びのおもちゃです。
布にカシャカシャと音の鳴る素材を挟んで、感触遊び+音の鳴る仕掛けをしたり、側面にはいろいろな素材の紐やズボンの切れ端をつけて感触や形を楽しめるような工夫をしていたようです。
娘もカシャカシャという音が気に入ったのか、よく握って遊んでいましたよ!
座れるようになってくると、絵本なんかもいいですよね。
何度も繰り返し読んでいると、ニコニコしてきたり、ジタバタする機会が増えてきます。
赤ちゃんと人形を使って遊んだり、絵本を読んでも赤ちゃんに反応がないことはよくあることです。
「反応がないから遊ぶ意味がないなあ…」と思って、赤ちゃんとの遊びをやめないでください!
赤ちゃんは反応を表出しない(できない)だけで、刺激に対してインプットはしています。遊びの対象物を認識していない場合もあるかと思うので、その時は赤ちゃんの視点が合ったのを確認してから遊び始めるといいですよ!
もう少し大きくなると、ニコっと笑ったり、大きくジタバタしたりと、大人が見てもわかりやすい表現ができるようになるかと思うので、ぜひ繰り返し読んであげてください!
赤ちゃんは産まれたばかりはほとんど目が見えていませんが、生後1週間くらいでゆっくりとした動きに反応するようになり始め、生後2週間くらいで両目で見ようとします。
生後3ヶ月くらいになると左右に動くものを目で追うようになってくるので、頭上におもちゃを吊るしたり音の鳴る遊び道具を置いておくといいですね。
赤ちゃんが手を伸ばすと触れたり、音が鳴ったりすると、もっともっとと腕を伸ばすようになります。そうやって赤ちゃんを刺激し、脳を活性化させてみてください。
視力と見え方の目安 | 発育に合わせた遊び | |
生後 1週間 |
・ゆっくりとした動きに反応する |
・メリーなどを吊るしておく |
生後 2週間 |
・両目で見ようとする |
・メリーなどを吊るしておく |
生後 6週間 |
・動かないものを見られるようになる |
・赤ちゃんの視界に入りやすい位置で人形遊びをする |
生後 3ヶ月 |
・動くものを頭を動かしながら目で追う |
・手の届く位置に音のなるおもちゃを置く |
生後 4ヶ月 |
・自分の手を認識し、目と手の感覚があってくる |
・カシャカシャと音のなる感触のおもちゃを握らせる |
生後 6ヶ月 |
・視力が 0.1前後になる |
・顔のあるおもちゃで遊ぶ |
特別支援学校では、体の自由が効かない生徒や、目の見えない生徒が在籍しています。
そんな生徒も、自分の近くに遊び道具が用意されていて遊べる体験を繰り返していると、自分から刺激を探すようになります。
赤ちゃんも同じで、自分から行動を起こすこと(手を伸ばすこと)で、なにかが起こる(音が鳴る)といった環境をつくると、刺激を探すようになります。
自分の行動で遊べた体験は成功体験となり、思考と行動が繋がる働きをより進めてくれます。ぜひ、赤ちゃんが遊べる環境を整えてみてください!
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PHOTO/宗玄浩