babyco編集長。書籍編集者。
新潟の山奥で肉用牛を飼育しながら、野菜やくだものを育てる祖父母のお手伝いをきっかけに、丹精込めて作られた食材のおいしさ、食べることや命の大切さを学ぶ。特集記事、離乳食やママごはんなど幅広く担当。ママ・パパの気持ちに寄り添った記事の制作を心がけている。
おなかを痛めてわが子を産むママに比べて、パパは父親としての自覚を持ちにくいと言われています。しかし、子育てにおいてパパはれっきとした“当事者”。babycoでは、この自覚を「パパ意識のスイッチ」と考えました。パパにしかないこのスイッチ、どうやってONするのでしょう?
人によっては赤ちゃんが生まれたときからこの自覚を持てるパパもいらっしゃいますよね。では、「わからない」「できない」と悩むパパは何がわからないのか? できないのか? その本音を探るべく、babycoの人気コーナー「パパ向上委員会!」の森口佑介先生に、当時の気持ち(現在4歳になる娘さんがいらっしゃいます)を思い出していただきながらパパの気持ちを語っていただきました。
編集長(太田):
babycoで連載しているパパのお悩み解決コーナー『パパ向上委員会!』では、悩めるパパたちに毎回寄り添ったアドバイスをありがとうございます。先生にも4歳の娘さんがいらっしゃいますが、お子さんが生まれて子育てがスタートしたときはどんな気持ちでしたか?
森口先生:
多くの男性をはじめ、私自身もいまだにそうかもしれないのですが、“
子育て=ちょっとするもの”という感覚だったのかなと。例えばだっこにしても、私の見ていないところで妻は7〜8時間近くだっこしているわけですよね。でも、私は“自分が見ている時間”のことしか考えていなかった。仕事から帰ってきてちょっとだっこして、それでもうだっこしたつもり。あやして泣きやんだ日には「どうだ、だっこしたったぜ!」って満足して。
当事者意識がなかったなと、一番反省したことです。
編集長(太田):
奥様は、そんな森口先生の姿を見てどう思っていたんでしょうか?
森口先生:
「
だっこってそういうものじゃないんだぞ」「
あなたも親なんだぞ」と思っていたのではないでしょうか。妻の意識としては、だっこは呼吸することと同じくらい普通にやっているものだと思います。でも当時の私は、おじいちゃんおばあちゃんがちょっとだっこするのと同じような感覚で接していました。「この子をもっとだっこしてあげて」と言われて、
妻の目には私が子育てをしているように見えなかったのだと気づいたのです。
編集長(太田):
でも、パパも「あなたも今日から親ですよ」なんて言われても、いきなりだから困っちゃいそうですが。
森口先生:
そうなんですよね、そこがなかなか難しい。でも、
父親は完ぺきな当事者なので、やらなきゃいけないけれどやるまでのスイッチがたぶん問題だと思います。おそらく、女性はおなかを痛めて産むことでスイッチが入ると思うんですが、やっぱり男性はなかなかそのスイッチが入らないので。
編集長(太田):
森口先生は、何をきっかけにそのスイッチが入った感じがしましたか?
森口先生:
生後2ヵ月くらいは妻の実家で育てていて、私は週末だけ実家へ帰っていたんですがやっぱり他人事な感じがして…。一緒に暮らしてからも最初は関わり方がわからなかったです。
今は何をするべきなのか、子育てをする上で何が必要なのかわからなくて。おむつ替え、お風呂など、できることはなんでもしましたね。妻の言葉もあり、なにかしら関わり続けていたら、半年くらい経って「うまく子育てに関われているかも?」と思えるようになりました。
子どもに関わり続けることで、当事者としてのスイッチが入ったような気がします。
編集長(太田):
子育てって生まれる前から休みなく続くものですが、いきなり生活の一部にできるものなのでしょうか?
森口先生:
わが家では、基本的には妻が立てた段取りに従って「次は何をしたらいい?」と聞くようにしています。“早く寝かせる”という共通の目標に向かって、お風呂→髪を乾かす→歯をみがく→絵本を読む…と
逆算した計画を共有すると、この時間は何をすべきなのかがわかる。そこをちゃんと共有していないと、パパが手伝うことすら難しくなるので。
編集長(太田):
段取りができていると、子どもにも何か影響があるんですか?
森口先生:
子どもも「次はこれをやる」という見通しを立てやすくなります。
子どもは次に何がくるかがわからないと、なかなか落ち着けず不安やストレスが高くなってしまうんですね。なので、規則正しい生活は心と脳の発達にも大事だといわれています。
編集長(太田):
段取りにそってスムーズに進めばいいですが、思い通りにいかないのが子育て…。ということは、
ひとつのことができればいいというわけではないですよね。例えば、ママが料理中はパパはあやす担当だとする。でも、ママがごはんを作りたいのに赤ちゃんが泣いていて、パパがあやしても泣き止まないときはごはん作りを中断してママがあやす。中断すると食事の時間が遅くなるから、調理をパパにバトンタッチできるようにパパも料理を少し練習しておく…とか。
森口先生:
そうですね。味つけはママのほうがいいかもしれないですが、炒めるだけだったらパパでもできると思いますし。
何ができて、何ができないかを共有して「ここまではやっておくから」とできたらいいのかもしれないですね。
編集長(太田):
それも夫婦間のコミュケーションだと思うんですが、森口先生流のコミュニケーションテクニックってあるんですか?
森口先生:
うーん、難しいですねぇ…(笑)。まぁ、これは夫婦関係がうまくいくすべてだと思うんですが、
男性が女性に質問しなくちゃいけないということでしょうか。例えば、「できることある?」という一言を、言われる前に言うというのが男性側にとっては大事ですね。
編集長(太田):
言われる前に言うって難しそう…!
森口先生:
子育てって比較的ルーティーンなので、この時間は何をすべきかがわかれば自然と選択肢はしぼられるはずなんですよね。そういうコミュニケーションをパパからとらないと、ママが「じゃあもう一人でやるわ!」って抱え込んでしんどくなって、会話も減って…って悪循環になる気がします。
まずはパパが「やろう」という意識を持って、何をどうするべきかを考え続けることが大切だと思いますね。
イラスト:ヒダカマコト