babyco編集長。書籍編集者。
新潟の山奥で肉用牛を飼育しながら、野菜やくだものを育てる祖父母のお手伝いをきっかけに、丹精込めて作られた食材のおいしさ、食べることや命の大切さを学ぶ。特集記事、離乳食やママごはんなど幅広く担当。ママ・パパの気持ちに寄り添った記事の制作を心がけている。
2021年に国から発表された制度改革のうち、babycoが今すぐ取り上げねば!と注目をしたのが「パパの産休制度」の新設。この記事を読んでくださっているママとパパのなかにも、「どんな風に変わるんだろう?」と気になっている方が多いと思います。
babyco vol.57では、この制度の当事者であるママ・パパと一緒に“新たな子育て像”を考えるべく、産休や育休についての夫婦のホンネを聞きました。
共働きのご家庭が増えている今、ママとパパが仕事と育児をより両立しやすくなるように、2022年4月1日〜と10月1日〜の2段階に分けて、育児休業法の改革が行われます。
ママのなかには、出産や子育てをきっかけに今後の働き方について悩んでいる方もいると思います。パパのなかには、自分の会社も「育休を取りたい」と言い出しやすい環境だったらいいのに…と考えている方もきっといらっしゃいますよね。
そもそも、今回の制度改革の目的は
● 出産や育児などによる働く人たちの離職を防ぐ
● 希望に応じて、男性も女性も仕事と育児などを両立できるようにする
● 子どもが生まれてすぐの時期に、柔軟な育児休業の枠組みを設ける
● 育休を取得しやすい雇用環境を整える
● 働く人たちに対する個別の周知・意向の確認の措置の義務付け
● 育休の給付についての所要の規定の整備などの措置
などが挙げられます。どのように変わるのか、詳しく見ていきましょう。
2022年4月1日から変わることの1つ目は、ママとパパが育休や産休を取得しやすいように「雇用環境を整える」ことです。
ママとパパがお勤めの会社によっては、上司に育休の相談をしづらい雰囲気だったり、仕事が忙しくて育休どころではなかったりする場合がありますよね。そうした“産休や育休を取りにくい職場の環境や雰囲気”をととのえて、取得しやすい環境にしていきましょうという改革です。
会社では、次のいずれかの対応が必須となります。
①育休・パパの産休の研修実施
②育休・パパの産休に関する相談体制の整備
③社員の育休・パパの産休取得事例の収集と提供
④社員への育休・パパの産休制度と取得促進の周知
また、ママもしくはパパが「(妻が)妊娠をしました」「(妻が)出産をしました」と申し出を会社にした場合、以下のことを個別に伝え、意向を確認することが必須となります。
① 育休・パパの産休に関する制度
② 育休・パパの産休の申し出先
③ 育休給付についての話
④ 労働者が育休・パパの産休について負担すべき社会保険料の取り扱い
(確認方法は「面談」「書面交付」「FAX」「電子メールなど」のいずれか)
※雇用環境の整備、個別の周知・意向確認ともに、パパの産休については2022年10月1日から対象。
2022年4月1日からもう1つ変わることとして、育休を取得できる人の「雇用期間の制限をなくす」ことです。
これまでは、育休を取得できる条件として
①雇用期間が1年以上である
②1歳6ヵ月までの間に契約が満了することが明らかでない
というのが育休を取得する際のルールでした。
ですが、例えば妊娠や出産をきっかけに、家族のためによりよい職場環境に転職したとき、「1年未満だから育休は取れない」と言われたらかなしいですよね。そうしたことがないように、今回の改革では①が撤廃されて、雇用期間にしばられずに育休を取得できるようになります。
そして、2022年10月1日からは、育休に加えて子どもの出生後8週間以内に4週間まで「パパも産休を取得」しやすくなります。ママの産休期間に、パパも“育休とは別に”休暇を取れるということです。
パパの産休は分割して2回取得可能です。そのため、例えば出生時や退院時などに1回目を取得し、出生後8週間以内にもう1回取得するといったことができるのです。
さらに、育休制度にも動きがあり、2回に分けての取得や育休開始日の柔軟化、特別な事情によっては再取得が可能(※)となります。
※1歳以降の育休が、ほかの子についての産前・産後休業、パパの産休、介護休業または新たな育児休業の開始により育休が終了した場合で、産休等の対象だった子などがお亡くなりになった場合などは、再度育休を取得できる。
パパが産休を取得できるようになったら、今よりも夫婦で協力して子育てができるようになるのかな?と感じますよね。しかし、パパの産休取得は家族にとっていいことだけなのでしょうか。
子育てに奮闘するママとパパのホンネを社会に届けるべく、babycoママ・パパの産休や育休についてのリアルな声を聞きました。
まずは、今回の改革について、babycoママたちがどのくらい注目しているのかを聞いてみました。
改革の内容について理解度に差はあるものの、約8割のママがニュースで目にしており、関心度の高さがうかがえます。この関心度の差は、「もしもパパが産休を取得できるとなったら、わが家は取得しやすいか? 取得しづらいか?」という家庭の状況によっても、違いが出ているのかもしれませんね。
では、実際にパパが産休を取得できる時代がきたとき、パパの産休取得はいいことなのか? それとも、もう少し考えなければならない点があるのか? babycoママに考えを聞いてみましょう。
パパの産休取得に関しては、約7割のbabycoママが「いいことだと思う」と前向きに考えているようです。その一方で、パパが産休を取得することで「よくない面もある」という意見も出てきました。両方のbabycoママのご意見を、具体的に聞いてみましょう。
● いいことだと思う理由
・育児のひと通りの流れや大変さを理解できる
・一番成長の早い時期を、一緒に共有できる
・上の子の送り迎えや食事をお願いできる
・親を一番必要とする時期に、そばにいられる
● よくない面もあると思う理由
・育児に協力的でなければ、意味がないと思う
・家計が心配なので、働いてもらうほうがいい
・産後は体や気持ちの変化が大きいと聞くので、パパがそばにいるとイライラしちゃうかも…
いいことだと考える理由としては、生後すぐから子どものお世話や成長を共有することで夫婦のきずなが深まるという意見が多く見られました。赤ちゃんが生まれてすぐの頃からパパが育児に協力できていると、お子さんとの関係も深まりやすくなりますよね。
また、はじめて子育てをするママにとっては、出産で体力を消耗している上に、子育てに慣れない産後すぐの時期をひとりで過ごすのは不安も多いでしょう。パパがそばにいて、何かあったら頼れるというのは大きな心の支えです。
反対に、よくない面もあると考える理由として多く挙がったのは、育児に協力的でなければ家にいてもしょうがないという意見。パパがいてくれて心強いとはいえ、2人分の食事の準備や洗濯など、家事のやることは増えます。パパが家にいるだけの状況にならないように、産休期間や育休期間をどう活用するか考えながら、過ごす必要がありそうです。
ほかには、産休や育休中の収入面への不安の声も、多く見受けられました。
これまではbabycoママの意見を紹介してきましたが、一番の当事者であるパパたちはどう考えているのか?も気になりますよね。そこで、現在妊娠中のママがいるbabycoパパたちにもホンネを聞いてみました。
まずは、パパたちの産休・育休取得への希望について。babycoパパの意見によると、約6割が「取得したい」と考えているようです。その反面、迷っている方や取得したくないという方も。迷っているパパは、「仕事の調整ができるなら取りたいけど…」「会社や上司にどう切り出そうか…」などと考えているのかもしれませんね。
「取得したい」と答えてくれた約6割のbabycoパパに、取得したい理由を聞いてみたところ
1位 家族の時間を大切にしたい
2位 子どもとふれあいたい
3位 子どもの成長を見たい
4位 ママをサポートしたい
5位 今しかない時間だから
という結果に。「家族や子どもとふれあえる時間を大切にしたい」という理由が上位に挙がりました。以前は「ママは家庭、パパは働いてお金を稼ぐ」という考えが主流の時代もありましたが、最近はパパの意識が育児や家族に向き始めていますね。
先ほどのアンケートで、babycoパパの産休・育休取得についての想いがわかりました。ですが、いくらパパが取得したい!と思っても、勤めている会社にその気がなかったり、上司に言い出しづらい環境だったりしてはつらいですよね。
babycoパパが勤めている会社を参考に、取得しやすい or 取得しづらい職場環境なのかを聞いてみました。
約3割のbabycoパパは、産休や育休を取得しやすい職場のようです。しかし、約5割はまだまだ取得しづらいようす。「取得しやすい環境」と「取得しづらい環境」については、次のような違いがありました。
● 取得しやすい環境
1位 同僚や上司の理解がある
2位 先輩社員に育休を取得している人がいる
3位 会社が育休取得を推奨している
● 取得しづらい環境
1位 部署内での仕事の調整がしづらい
2位 先輩社員に育休を取得している人がいない
3位 仕事が忙しい
パパの意欲向上とともに会社や上の立場の人たちの意識改革も進んでいけたら、周囲に遠慮せずに「取りたいです!」と言いやすくなりますよね。
また、この記事を読んでくださっているママ・パパのなかで、残りの約2割のbabycoパパのようにお勤めの会社が産休や育休取得を推奨しているかわからないという方がいたら、ぜひ確認してみましょう!
イラスト:たかまつ かなえ
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