babyco編集長。書籍編集者。
新潟の山奥で肉用牛を飼育しながら、野菜やくだものを育てる祖父母のお手伝いをきっかけに、丹精込めて作られた食材のおいしさ、食べることや命の大切さを学ぶ。特集記事、離乳食やママごはんなど幅広く担当。ママ・パパの気持ちに寄り添った記事の制作を心がけている。
一緒に仲よく遊んでいるかと思いきや、
おもちゃの取り合いで急にけんかモードに入ったり。
「あ〜、また始まった!」と思って止めに入ろうとすると
いつのまにかケロッとして笑い合っていたり。
上のお子さんの存在が下のお子さんの目標になり、
下のお子さんの存在が上のお子さんの優しい心をはぐくむ。
きょうだいって、親とは違う不思議な関係ですよね。
上のお子さん、下のお子さん、それぞれの気持ちに立って
きょうだいの子育てについて考えてみましょう。
白梅学園大学子ども学部教授。臨床心理士、公認心理師。自身の子育て中に出会った、CARE−子どもと大人の絆を深めるプログラムや、離婚を経験した親子に向けたFAITプログラムなどを実践中。大学生、高校生の2児の母。
きょうだいの子育て、子どもの気持ちにどう寄り添う?|ママ・パパの気持ちが軽くなるきょうだい子育て①では、
● きょうだいとは、同じ家族でも親とは違う存在。一番近くで成長し合える特別な関係である
● 同じきょうだいでも個性がある。少しずつ時間をかけてきょうだいの子育てに慣れていこう
など、きょうだいの存在と、2人目以降を育てるときのママ・パパの心の持ち方についてお話ししました。
また、
● きょうだいが増えることは、上のお子さんにとって“人生初の一大事”である
● 上のお子さんが見せる「楽しみな気持ち」と「不安や寂しさの気持ち」に寄り添うことが大事
といった、上のお子さんの心のケアの大切さをお伝えしました。
今回は、きょうだいを育てているbabycoの先輩ママ・パパに、きょうだいができると知ったときの、上のお子さんのなつかしエピソードを聞きました♪ また、きょうだい同士の心をはぐくむ声かけやふれあいについてお話しします。
「きょうだいができるって言ったら、この子はどんな反応をするだろう? よろこんでくれるかな。戸惑うかな…」上のお子さんにきょうだいの存在を伝えるときって、ドキドキしますよね。
babycoの先輩ママ・パパの思い出に残る、きょうだいの誕生エピソードです。
下の子を妊娠しているときに、2歳になる前の上の子に「弟か妹ができるんだよ」と伝えたところ、その日から1週間夜泣きをしたことがありました。1週間大泣きして、ピタリと止まったので、幼いながらに思うところがあったのかなと思います。
(りょうくんママ)
うちの子は5歳差で、周囲のおともだちにきょうだいができ始めたこともあり「きょうだいがほしい!」と言っていました。安静にしている私を病気だと思って優しくしてくれて、おなかをなでながら「元気に生まれてきてね」と声をかけてくれました。
(かなママ)
わが家は4人きょうだいで、2番目の長男は下に弟か妹ができると知ったとき、味方がほしいからと「弟がいいな」と考えていたみたい。生まれたのが妹だと知り、号泣していたので、「パパと男同士でがんばろうな」と声をかけてあげましたね(笑)。
(だいすけパパ)
下の子が生まれたあと、私の病室に訪ねてきたときはかなり照れくさそうにしていたのが印象的です。しばらくしたら弟用のベビーベッドによじ登って入り、体をちぢこまらせて横になっていました! 下の子の小ささを感じていたのかなぁ。
(りんママ)
続いては、言葉や体のぬくもりで伝える「心」の寄り添いについてお話しします。
人に優しくされると「大事に思われているんだ」とあたたかい気持ちになりませんか。家庭のなかでも同じで、ママとパパが上のお子さんに優しくしてあげると、下のお子さんにも自然とその優しさがきょうだいの間で伝わっていくんです。
乳幼児は自分の気持ちを理解して表現する力が十分には育っていません。抱っこが減って寂しいけれど甘えたいとは言えず、思うようにうまくできなくてイライラしたり。うれしい気持ちももちろん、「悔しかったんだね」「自分でやりたかったんだね」といった気持ちも、いったん受け止めつつ、言葉にしてあげることで少し落ち着けることもあります。
赤ちゃんがかわいがられたり、お世話をされたりする姿は、上の子には時として複雑なもの。そんなときは「あなたは赤ちゃんだったときはね〜」「こんな風だったんだよ〜」と上のお子さんが赤ちゃんだった頃の話をしてあげるのもいいでしょう。「自分はこうやって大切にされたんだな」とわかると、安心したりうれしかったり。下の子にも優しい気持ちになれるかもしれませんね。
子ども同士のけんかのときなど、つい「おにいちゃんでしょ」「おねえちゃんなんだから」と言ってしまうときもありますよね。でも、「だからあなたが我慢しなさい」というメッセージが込められていると、子どもにとってきついかもしれません。下の子に優しくできたときこそ「優しいおにいちゃんだね!」と肯定的な関心を向けるほうがうれしいし、おにいちゃん・おねえちゃんらしくなれるのではないでしょうか。
きょうだいげんかは危険がともなわない限り、子どもの成長に大切なことも少なくありません。きょうだいだからこそぶつかれるし、自分の気持ちを主張したり、悔しい思いをしつつ仲直りしたりすることで、子どもはたくさんのことを学んでいます。そのようなときは、「おもちゃを取られて悔しかったんだね」と気持ちをくみつつ言葉にしてあげたり、仲直りできたときは「がんばって仲直りできて、ステキだね」などと、声をかけてあげたいですね。
今回お話を伺った福丸先生は、「CAREプログラム」という子どもと大人のあたたかな関係づくりのプログラムを実践されています。
CAREというのは、読み方は英単語のcareと同じ「ケア」ですが、Child-Adult Relationship Enhancement(子どもと大人の絆を深める)という意味の言葉です。
お子さんといい関係を築きたい、あたたかい時間を持ちたいと思ったときには、まずは子どもの気持ちやペースに寄り添うことを大事にしてみましょう。
伝えたいことをうまく言葉にできなかったり、お子さんの行動がじれったく感じたりするときもあると思いますが、子どもは「自分が受け入れられている」と感じて安心するきっかけになります。
そして、CAREプログラムで大事なのは
● 子どものよい行動に肯定的な注意を向けて、“具体的にほめる”
● 子どもの適切な会話を“くり返す”
● 子どもの適切な行動を“言葉にする”
という3つの関わり方。
例えば、
「具体的にほめる」だったら…
おもちゃを元あった場所に片付けられたときに「おもちゃをもとのところに片付けてくれてありがとう」と、子どもの動きを具体化しながらほめる
「会話をくり返す」だったら…
子どもが「きょうね、○○くんとね、なかよししたよ」と話してくれたときに「○○くんと仲良く遊んだんだね」とくり返し、耳を傾けてあげる
「行動を言葉にする」だったら…
家に帰ってきたとき、靴をそろえてぬいだら「ちゃんとくつをそろえてぬいだね」、おやつの前に手を洗ってきたら、「ちゃんとてをあらってきたね」と、行動を言葉にして表現する
というイメージです。
日頃から、こうしたコミュニケーションを少し意識すると、「ちゃんと自分が大事にされている」「聞いてもらえる(受け止めてもらえている)」「見ていてもらえる」と子どもが感じることができます。これは子どもが安心感を持てることにもつながりますし、適切な行動を学ぶきっかけにもなります。
しかし、子育てに奮闘する日々のなかでは、常に子どものペースに合わせたり、言葉に耳を傾けたりするのは難しいですよね。なので、1日5分でいいから、これらのことを意識して、その5分間の間に、お子さんとじっくり向き合ってあげてみてくださいね。
上のお子さんが寂しそうにしているなと感じたら、下のお子さんが寝てくれたときに一緒におやつ休憩を取りながら「ふたりだけの内緒のおやつの時間ね」と特別感を出してあげたり。そうした時間に、このCAREプログラムのことも意識するようにすると、とってもいいですね。
上のお子さんの1日のなかでママやパパとのこうした特別な時間が少しでもあると、きょうだいができても「ちゃんと大事にしてもらえるんだ」と思えるでしょう。下のお子さんに物心がついてきたときにも、同じようにしてあげるといいでしょう。
それぞれのお子さんに手がかかる時期ですから、ひとりひとりに向き合っている時間なんてありません!ということもありますよね。例えば、一緒に遊んでいるきょうだいに向かって「仲良く遊べて、ふたりともステキだね!」と声をかけてもいいのです。
ママやパパがそういう「あなたたち」のことをうれしく見守っているよ、ということも伝わります。きっと、ママやパパとお子さんとの間も、きょうだいの間も、ほっこりあったかくなるのではないでしょうか。
イラスト:高村 あゆみ