元高校教員で、現在はフォトグラファー・ライター。 3歳の娘を育てる父で、子どもの顔写真を毎日撮影するプロジェクトを実行中。 ブログ『23時の暇つぶし』 では、娘の成長記録をパパ目線で発信。
子育て中のお父さんとお母さん、赤ちゃんは可愛いいですか?
生まれた赤ちゃんが退院して自宅にやってくると、赤ちゃん中心の生活が始まりますよね。毎日赤ちゃんのお世話をしていると、ふと罪悪感を感じたり、自己否定してしまうことはありませんか?
「自分の子どもなのに、赤ちゃんをあまり可愛いと思えない…」
男性女性問わず、何人かの親から「子どもが話せるようになるまで心から我が子を可愛いとは思えなかった」という話を聞いたことがあります。
今回は自分の子どもを本心から可愛いと思えない親の悩みが少しでも和らげばと思い、子育て体験談を綴っていきます。
今回は、「自分の子どもを可愛いと思えない」というちょっと攻めたテーマで記事を書いているのですが、この記事を書こうと思ったのにはある出来事が僕の心に残っているからでした。
我が家の子どもが生まれて5ヵ月の頃。
赤ちゃんを連れて実家に帰省をした時に、高校時代の親友(男性)と会ったんです。
その男性は3人の子どもがいるパパで、上の子どもは既に小学生。
友人ながら先輩パパですね。
「3人の子どもを育ててるなんてすごいよね」なんてことを軽口で話していると、我が家の赤ちゃんが泣き始めました。
僕は泣いている赤ちゃんを抱っこしながら赤ちゃんに声をかけていると、不思議そうに僕を見つめる友人と目が合ったんですね。
ふと、当時のことを振り返って語り始めた友人。
友人は、自分の子どもを心から可愛いとは思えなかったという話をしてくれました。
もちろん、可愛いと思う瞬間はあるし、いろいろな育児は率先してやってきたけど、「不思議な存在だなあ」とか「なに考えてるんだろ?」という思いが強くあって、「心から可愛い」とは思えなかったと伝えてくれたんです。
親友の思いがけないカミングアウトに、その理由を尋ねてみたくなって、話を深堀りして聞いてみることにしました。
言葉を発しない赤ちゃんとはなかなかコミュニケーションをとれないこと。
赤ちゃんに歌を歌ったり、返事のない声かけをするのは恥ずかしくなること。
赤ちゃんの反応もあまりないから、これでいいのかと不安になったこと。
世の中のママたちの前でこんな話をしたら「なに言ってんのよ!ふざけんじゃないわよ!」とお叱りを受けそうですが(そして、そんなことを記事にしてしまっていますが…)、僕の親友は、親友だからこそ言えるようなちょっと言いにくい心の内を語ってくれました。
友人が小さな赤ちゃんを心から可愛いと思えなかったという話は、我が子を可愛いと思えた僕にとっては新鮮な視点でした。
その友人は「育児はやっている方だと思う」と話していたし、実際に別の機会で友人の妻に会ったときも「よく家事・育児をやってくれている」と満足そうでした。
「育児や子育てをやっている」とは別のところで自然と湧いてくる「子どもを心から可愛いと思えない」という心理。
その後、女性の友人からも同じように「我が子のことをあまり可愛いと思えない」という話を聞いたことがあって、「男性女性問わずあることなんだ」と実感しました。
友人パパが赤ちゃんをかわいいと思えなかった理由
▶︎会話ができずにコミュニケーションがとれないから
▶︎なにを考えているのかわからず、通じ合えないから
▶︎一人で赤ちゃんに語りかけても、反応がほとんどないから
▶︎そもそも子どもは好きじゃないから
この記事の読者の方は、いかがですか?
「まだ話すことのできない小さな我が子を、心から可愛いと思いますか?」
友人が話してくれた「子どもを可愛いと思えない一番の要因」は、コミュニケーションがとりにくいことでした。
コミュニケーションをとりにくいことで赤ちゃんのことを理解できず、共感できないことが「我が子を心から可愛いと思えない」と感じさせる要因になっているようです。
コミュニケーション…。
コミュ力が高い…。
コミュニケーション不足…。
そもそも、コミュニケーションとは一体なんなんでしょうか?
goo辞書では、コミュニケーションは「社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと。言語・文字・身振りなどを媒介として行われる。」とあります。
▶goo辞書「コミュニケーションの解説」
以前、特別支援学校で勤務をしていた時の研修で、コミュニケーションとは
がポイントだと教わりました。
双方向のやり取りとは、伝え合うということです。
こちらが伝えたい「発信」と、相手の伝えたいことを受け取る「受信」の双方向があってこそ、コミュニケーションは成立するということになります。
想像してみてください。
自分が伝えたいことを相手に関係なくマシンガンのように早口で機械的に伝える人のことは、「この人って伝える気があるの?」と思ってしまいますよね。
こういう人は発信者の立場でしか考えられず、受信者の立場を考えないことからコミュニケーション力が高いとは言えません。
それは大人と赤ちゃんの関係性でも同じで、受信と発信の双方向の関係性があってこそ、コミュニケーションは成り立つということになります。
もう1つ大切な視点として、コミュニケーションの手段は言語だけではないということが挙げられます。
文字でも、ジェスチャーでも、表情でも、視線でも、抱きしめることでもコミュニケーションの手段としては成り立ちます。
つまり、赤ちゃんは会話ができないからといってコミュニケーションがとれないわけではないし、2歳になって会話ができるようになったからといってコミュニケーションがとれるとは限らないわけです。
会話は手段でしかなく、双方向のやり取りがあればコミュニケーションは成立するということは…
赤ちゃんとコミュニケーションをとるにはどうすればいいの?に置き換えたとき、赤ちゃんが理解できるような発信力の工夫ができればいいし、赤ちゃんのことを理解できるような受信力をつけられればいいということになります。
友人は、子どもと会話ができるようになると可愛いと感じるようになったと話していました。
それは、会話をして双方向のやり取りができるようになって、コミュニケーションがとれるようになった要因が大きかったからです。
会話は多くの人にとって一番わかりやすいコミュニケーションの手段ですが、赤ちゃんにその手段が有効とは限りません、
それなら、赤ちゃんとは言語と異なる手段のコミュニケーション方法を合わせもてばいいわけですね。
例えば、大人からの発信として「人形を赤ちゃんの前にゆっくり登場させてみた」とします。
<赤ちゃんの人形に対する変化>
人形を見つめるようになった。
↓
人形を目で追うようになった
↓
人形に笑うようになった
↓
こちらの呼びかけに反応するようになった
こんな赤ちゃんの小さな発信を、親が受信できるようになれば、それはコミュニケーションが成立しているわけです。
子どもに自分の関わりが伝わった!と感じたときや、子どもの伝えたいことがわかった!と思うことが増えれば、親は大きな喜びを感じ、我が子を可愛いと思うようになるのかもしれません。
実際に僕もそうでした。
その喜びを我が子と共有し合うことが、子どもを可愛いと思えるようになる大きな要素なのではないかと僕は思います。
今回、この記事でお伝えしたかったことは2つで、それらは自分の子どもを可愛いと思えなかった時の対処法としても繋がっています。
1つ目は、
『今、赤ちゃんを心から可愛いと思えなかったとしても、時期が変われば気持ちも変化するかもしれない』こと。
2つ目は、
『コミュニケーションの考え方や知識が増えれば、より赤ちゃんの小さな変化に気づいて喜びを感じられるようになる』こと。
自分の子どもを可愛いと思えなかったとしても、僕の友人のように時間が解決してくれるケースは多くあります。
関わる時間が増えたり、抱っこをしてスキンシップをしていれば、脳から「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンが分泌され、愛情を深める効果があると言われています。
オムツ替えや抱っこをして赤ちゃんと触れ合いながら一緒に時間を過ごすことで、子どもを可愛いと感じられるようになるかもしれません。
CLICK▶︎「親子の親子の絆にはオキシトシン!肌触りも影響するって本当?」より
赤ちゃんは日々成長していきます。そして、小さいながらも発信力を高めていきます。
最初は泣くことでしか主張できなかった要求を、目線だったり、手をつかったり、言葉を発せられるようになったり。
赤ちゃんの成長過程にはもっと細かい順序があるのをご存知ですか?
例えば目に見える色については、最初は白・黒・グレーに見えていて、次に赤色が見えるようになると言われています。
目の動きについても1週間くらいでゆっくり動くものに反応できるようになっていくんですが、速い動きには対応できないから、ゆっくり近づくと赤ちゃんが反応しやすかったりします。
こういう知識があることで、赤ちゃんへの発信の方法を変えたり、赤ちゃんが受信しやすいような工夫が考えられるようになるわけですね。
赤色の布で遊ぼうとか、ゆっくり動けば赤ちゃんが目線を追ってくれるかも…みたいな工夫をして、赤ちゃんが反応すれば、とても大きな喜びになりますよね!
知識は赤ちゃんとのコミュニケーションをより豊かにしてくれます。
赤ちゃんの成長過程が紹介された本もたくさんありますし、赤ちゃんが喜ぶ言葉や遊び方についてはこんな記事もありますよ。
CLICK▶︎親子のきずなを深めるコミュニケーション〜赤ちゃんのサインや遊び方
今回は「自分の子どもを可愛いと思えない」という、ちょっと攻めたテーマから、その心理や赤ちゃんとのコミュニケーションの考え方&方法について書きました。
この記事を読んでいる方の中で子どもを可愛いと思えない方がいらっしゃるならば、同じように悩んでいる方がいることを知ってもらえれば嬉しいです。
赤ちゃんが可愛くないという感情は決してあなただけのものではないこと、おわかりいただけたんじゃないかな?と思います。
赤ちゃんの成長過程の知識をつけるだけで、子どもとの関わりは格段に楽しくなります。
子どもの成長を感じ取れた!
子どもがこちらの遊びに反応した!
お互いが通じ合えた!
そんな双方向の喜びが、子どもを可愛く感じるようになるキッカケになるかもしれません。
あなたの子育てがより楽しくなることを願って。
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PHOTO/宗玄浩