babyco編集長。書籍編集者。
新潟の山奥で肉用牛を飼育しながら、野菜やくだものを育てる祖父母のお手伝いをきっかけに、丹精込めて作られた食材のおいしさ、食べることや命の大切さを学ぶ。特集記事、離乳食やママごはんなど幅広く担当。ママ・パパの気持ちに寄り添った記事の制作を心がけている。
365日、私たちの生活に欠かせない「ごはん」。ちゃんと食べないと元気が出ないし、とくに妊娠中は2人分のパワーが必要ですから、ママにはしっかりごはんを食べてほしいんです。
管理栄養士。東京生まれ。明治大学第二文学部卒業。3人の子育てをしながら栄養学を学ぶ。矢島助産院で日々、妊婦さんや産後ママのための食事を担当する傍ら、企業や雑誌などで離乳食の監修やママのための食に関する講演・講習会などを各地で行う。著書に『妊娠・授乳中の気になる症状改善レシピ200』(日東書院)ほか
● 主食は「お米」、汁ものは「具だくさんのスープ」がおすすめ
● 市販のフリーズドライの汁もの、カップスーブでもOK
● 献立に汁ものを取り入れる習慣をつけておくと、離乳食作りもラクに
というお話をしました。
これまでの「ママと赤ちゃんの食事と栄養」の連載では、妊娠中にとりたい1日2,000kcalのエネルギー量を満たすための食事の仕方をご紹介しましたね。
エネルギーのとり方がわかったら、次は、妊娠中に必要な「葉酸」「鉄分」「カルシウム」「ビタミンA」の4つの栄養素を効率よくとれる、かしこい食材の選び方と調理のコツをお教えします。
これらの栄養素は、妊娠中だけでなく産後にも、女性だけでなく男性にも、そして子どもにも大切なものです。家族ごはんにも取り入れれば、家族みんなの健康生活につながりますよ。
妊娠中に意識したい“減塩”も、実はちょっとした味つけのコツで対策ができるんです。
納豆や豆腐、高野豆腐などの大豆製品は、葉酸、鉄分、カルシウムなどママに必要な栄養がたくさん詰まったスーパー食材。女性ホルモンと似た働きをするイソフラボンやポリフェノールが豊富なので、産後も積極的に摂ることをおすすめします。
納豆は、オクラや大根おろしなどと一緒にうどんやご飯にのせればつるつるっと食べられるので、つわりがあるときでもおすすめです。チャーハンに入れて炒めると、香ばしい風味で食欲がアップします。
高野豆腐はお湯で戻してあんかけをかけて食べるのもいいですね。豆腐よりも日持ちがする上に、買いものの際も軽くて負担になりません。
豆腐は水分が多くペースト状にしやすいので、離乳食にも使いやすい食材です。
お魚のカルシウムを余すことなくとるには、やわらかくて噛み砕ける骨も一緒に食べましょう。おすすめは鮭の中骨缶。骨もほろほろで、1缶で牛乳約1本分のカルシウムがとれます。
また、カルシウム以外にも、さば缶などに含まれるDHAという質のいい脂肪酸には、中性脂肪を抑制する働きや脳の神経細胞を活性化させる効果が期待できます。簡単に調理できるので、トマト缶と一緒に煮込んでミネストローネ風にするとおいしいですよ。
ししゃもや煮干しなど、丸ごと食べられる小魚もすごくいいです。焼き魚の場合は、お好きでしたら小骨も一緒に食べるとカルシウムの摂取量がアップするので、「身以外にも食べられる部分がないかな〜?」と探してみましょう!
◆ どうして妊娠中にカルシウムをとったほうがいいの?
骨の形成に必要なカルシウムは、赤ちゃんのためだけでなく、実はママの体のためにも積極的にとったほうがいいです。「カルシウムをとらないと赤ちゃんの骨の形成に支障が出そう」と考える方がいるかと思いますが、ママがカルシウムをとらなくても赤ちゃんにカルシウムがいくので、赤ちゃんの骨の形成に支障が出ることはありません。
しかし、月経がとまる妊娠中は、エストロゲンが減って更年期と同じような症状が出やすく、骨がもろくなりやすいです。だからこそ、妊娠中のママにはカルシウムが必要なのです。
鉄分をとるには、精製しすぎたものはあまりおすすめしません。お米や砂糖などを買うときは、胚芽米や黒砂糖など「黒いもの・茶色いもの」を選びましょう。全粒粉のパンにも鉄分が含まれています。ただ、胃腸の弱い方が玄米などを食べると消化不良を起こすことがあるので、自分の体に合うものを選んでください。
みなさんは「ひじきは鉄分が豊富」というのを聞いたことがありませんか? これは、鉄鍋でぐらぐらゆでることで鉄鍋の鉄が溶出するからなんです。最近では、ひじきはほとんどステンレス製の鍋で煮て製造するため、鉄鍋での製造に比べると鉄分量は非常に下がっています。鉄製のおたまやフライパンで調理したり、お湯を沸かしたりすると鉄分がとれるのでぜひ試してみて。
辛味や酸味のある調味料は旨みや香りが豊富なので、塩がなくても料理がぐっとおいしくなります。例えば、ラー油数滴を垂らして和え物にするなど、妊娠中の食事の味にバリエーションを出したいときにも。辛味がすごく強いものをお好きなママもいらっしゃると思いますが、胃腸を刺激したり、薬膳的な考えでいうと体を乾燥させたりするので妊娠中はひかえめにしたほうがよいでしょう。
◆ 「塩分をとりすぎた!」と思ったら何を食べたらいい?
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)によると、一日の塩分摂取量は女性では8gとされています。しかし、8gで抑えるのは難しく、だいたい10gはとっているんです。そのため、塩分をひかえる対策だけでなく、“塩分を排泄させる対策”も覚えておくとよいでしょう。
塩分を排泄させるカリウムを含んでいるのは、キャベツ、瓜系の野菜(冬瓜やきゅうりなど)、くだもの、あずきなどがあります。とくに、あずきは中国では「赤小豆(セキショウズ)」といって女性にとってのおくすりと考えられています。鉄分が豊富で、利尿作用があるのでむくみにもいいんです。妊娠中に甘いものを食べたくなったら、動物性の食品を多く使って作る洋菓子よりも、植物性の食品で作る和菓子のほうが体へのうれしい効果としておすすめです。