babyco編集長。書籍編集者。
新潟の山奥で肉用牛を飼育しながら、野菜やくだものを育てる祖父母のお手伝いをきっかけに、丹精込めて作られた食材のおいしさ、食べることや命の大切さを学ぶ。特集記事、離乳食やママごはんなど幅広く担当。ママ・パパの気持ちに寄り添った記事の制作を心がけている。
出産が近づくにつれ、子どもに会える瞬間が待ち遠しい反面、不安な気持ちもあるママは多いでしょう。
母子ともに健康で、わが子を愛する気持ちが自然と湧いてくるような幸せなお産のために。20年以上にわたり多くのお産を見てきた助産師さんが思う、出産の不安との向き合い方をお話しします。
一般社団法人ドゥーラ協会 代表理事。公益社団法人東京都助産師会 代表理事。松が丘助産院 院長。中央大学法学部を卒業後、中野区役所に勤務。福祉部に所属し、老人福祉の仕事に携わる。第1子の誕生を機に子どもを産む幸せと助産婦のケアに感動し、多くの女性に出産のよろこびを伝えたいと助産師を目指す。助産師資格を取得後、矢島助産院、育良クリニックで研修し、平成10年3月に松が丘助産院を開院。2012年3月には一般社団法人ドゥーラ協会を設立。出産直後のお世話を自宅で見守ることができる職業「産後ドゥーラ」を養成し、心身のケアや育児の助けを必要とするママに寄り添う。
つわり、体のだるさ、おなかの張りといった体の不調のほかに、妊娠中につらいのがメンタルの不調です。
とくに、多くの妊娠中のママのメンタルをゆらすのが出産への不安感。「はじめての出産でこわい」「検診で指摘されて不安でいっぱい」「過去に流産経験があるから今回も不安」など、さまざまな理由の不安感を抱えながら、出産に向けて心の準備を整えているママがたくさんいます。
babyco会員461人の産前産後のママたちに、妊娠中のメンタルの不調について聞きました。
461人のママのうち、約6割が「妊娠中にメンタルの不調を感じる(感じた)」と回答しました。
その不調が具体的にどのようなものかについては、もっとも多いのが不安感、次いでイライラ、気分の浮き沈み、ねむれない、泣きたくなるといったものが挙がりました。
なかには「焦燥感」「強い恐怖感」「悪夢を見る」「細かいことが気になる」という意見もあり、その感情を「奥に溜まっていた吐き出したい気持ちが溢れた感じ」と表現するママもいました。
メンタル不調の原因だと思われるものについては、生理的な現象であるホルモンバランスの変化が多かったものの、出産に向けた心の準備も多く挙がりました。
そのほかには、自律神経の乱れ、体型の変化によるストレス、産後の生活の準備などがありました。
不安の理由としては、出産への不安のほか、産後の生活(準備、実際の育児、職場復帰など)を想像して強まっているのかもしれません。
また、イライラの理由には、妊娠によるホルモンバランスの変化や、不安感や胎動などでの睡眠不足による自律神経の乱れが大きく関係していることが考えられます。
孤独感を感じているママもおり、産休などで社会との関わりが少なくなり、気軽に気持ちを話したり相談したりできる存在がいないなかで、自分自身と向き合わなくちゃいけないといった状況が、妊娠中のママをひとりぼっちの気持ちにさせているのかもしれません。
妊娠中のメンタル不調にはホルモンバランスの変化が関係しているからこそ、自分ではコントロールが難しいもの。
とくに出産は、初産のママにとっては経験していないことですし、第2子や第3子の場合も元気に産めるか不安に感じますよね。
出産への不安や恐怖を感じたら、どう向き合えばいいのか。一般社団法人ドゥーラ協会の代表理事で、東京都中野区の松が丘助産院で助産師を務める宗 祥子先生に向き合い方を聞きました。
出産について「こんなに大変だった!」という声を見ると、陣痛ってどのくらい痛いのかな、無事に産めるかなと、お産がこわいものに感じますよね。
だけど、子どもの誕生ってすごくおめでたいこと。産んだわが子を抱いた瞬間、みんな、幸せいっぱいの表情になるんです。
助産院を開院して今年で25周年を迎え、多くのお産を見てきました。自然出産をする方は自分の体のリズムでご出産されますので、時間がかかったり、体力をとても使ったりしますが、皆さん、とても幸せなお産をなさいます。
幸せなお産とは、生まれたわが子を抱いたときに「かわいい」「幸せ」という気持ちが自然に湧いてくるようなお産です。
幸せなお産をしているママは、おなかの子どもと一心同体になり、自分の力で産むためにきちんと体の状態と向き合って準備をしているなと思いましたね。
不安でいっぱいのママ。出産は痛くないと言ったらうそになるけれど、とても幸せなことだというのを忘れないで。
経験していない痛みやトラブルを想像して不安になるよりも、少しでも不安が軽くなるように、幸せなお産をするための体の準備を始めてみましょう。
心と体は一体なので、体を整えることで心も変化してきますよ。
出産の不安を抱えるママの気持ちが、少しでも安心に向くように。幸せなお産のための体づくりについて、宗先生からアドバイスをいただきました。
出産は、赤ちゃんの出てきたいタイミングに合わせてママの体がゆるむ、本能でするもの。木から木の実が熟して、落ちるように出てくるわけです。
自然なお産をするためには、ママの生活が自然のリズムに合っていることが大切です。
太陽が沈んだらねむくなり、太陽が出てきたら目が覚めるというリズムに近づけるために、21時か22時には寝て、5時か6時には起きるというリズムが理想的ですね。
早く寝ることが難しいママは、スマホを見る時間を減らして目を使い過ぎないようにする、夜更かしをしないようにするなど、自然のリズムと反することを減らすようにするといいでしょう。
これは、無痛分娩を考えているママも同じです。無痛分娩は促進剤や麻酔を使うので、子どもの出てきたいタイミングに合わせて産む自然分娩と違い、人の手が加わります。
痛みがなく産めるからといって、そこまで体の準備を気にしなくても大丈夫だろうという考えは危険です。どのような分娩方法であっても、出産に向けた体づくりが安産につながります。
妊娠中はストレスをなるべく溜めないのが理想的ですが、出産への不安、ホルモンバランスの変化や自律神経の乱れによる気分の浮き沈み、仕事や人間関係、体型の変化などストレスから逃れるのは難しいもの。
気持ちがネガティブに向いてきたら、体を温めることを意識してみてください。
とくに「ゆっくりお風呂に入る」「適度に運動する」のは、とてもシンプルなことですが、全身が温まってリラックスでき、気持ちがゆるみます。
また、爽快感を味わえてリフレッシュでき、気持ちがポジティブになります。
入浴後の「さっぱりしたー!」という感覚、運動後の「気持ちがいいー!」という感覚を妊娠中も日々感じることで、気持ちが回復していくでしょう。
メンタル不調や体調不良で思うように動けないときのために、話を聞いてくれたり頼ったりできる外の存在を見つけておくのも大切な準備のひとつ。
通っている助産院の助産師さんなど、思い浮かぶ人はいますか?
「産後は実家に帰る」「母親が手伝いにくる」昔は当たり前だったこうしたことが、今の時代はゆとりがなさ過ぎて難しくなっています。
集団で子育てができないことが「孤育て(孤独な子育て)」につながり、ママのメンタルを苦しめているのも事実です。先ほどのアンケートでも、「社会との関わりの少なさ」がメンタル不調の原因になっているママもいましたよね。
私が代表を務める一般社団法人ドゥーラ協会は、こうした状況下でがんばる妊娠中・産後のママたちに寄り添い、サポートする“産後ドゥーラ”を養成するために設立しました。
不安でねむれないママの話を聞く。
お子さんを預かってママがゆっくりお風呂に入れるようにする。
ひとりでお茶できる時間をつくる。
何も気にせずに昼寝できる。
おいしいごはんを代わりに作る。
こうしたケアを産後ドゥーラがしてくれることで、ママってすごくゆとりができるんですよね。
最近では、産後ドゥーラを安く利用できるように国の行政機関がどんどん取り入れて始めているので、お住まいの地域で探してみてくださいね。
近くの産後ドゥーラを探す こちら