お腹が大きくなることで内蔵が圧迫されたり、ホルモンの影響などで妊娠中に便秘に悩まされる人は、案外多いもの。
中には便秘が悪化して痔になってしまうことで痛みや出血が出てしまうことも…
ここでは、便秘になりやすくなる原因や、ウィメンズクリニックの先生に聞いた簡単にできる改善法などをご紹介!
腸内環境が整うと赤ちゃんにも栄養がいきやすくなるので、妊娠中はいつも以上にお腹の調子に気をつけて、心も体も特になるべく労ってあげましょう。
AYAウィメンズクリニック院長 京都・大阪の市中病院で、産科・婦人科・救急に携わるうち、妊娠・出産前からの体づくりや、手術の前後にできるセルフケアを模索し始める。 現在は、東洋医学をはじめとするメソッドを導入・統合し、診療や患者指導に役立て、成果を挙げている。 著書に「赤ちゃんができた!さずかり体操」マキノ出版
便秘は3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態を指します。
猫背など姿勢の影響で腸の周囲の筋肉が凝っていたり、月経周期に分泌される女性ホルモンの影響により、日頃より女性は便秘になりやすい要因がありますが、妊娠中はさらに様々な条件が加わります。
妊婦さんの中には、女性ホルモンの影響による便秘と浮腫みにより、お腹の張りやしんどさを感じるだけでなく、便秘になると赤ちゃんに影響があるのでは?と不安になる方も多いのではないでしょうか。
また便秘で腸にガスが溜まり腹部が張ると、切迫早産による子宮の痛みなのか見分けがつかず不安になる妊婦さんも多く、また妊娠中に排便のために力をいれてもいいか、硬い便で肛門の粘膜がきれて少量出血したけれど大丈夫かと不安で産婦人科を受診される方も少なくありません。
実際に出血が肛門の粘膜からなのか、膣や子宮の中からの出血なのか診察してみて初めて安心される方もいます。
また便秘の悪化から痔ができることで出血や痛みを抱える妊婦さんはとても多いものです。
妊娠中の便秘は、妊婦さんやベビーにどんな影響があるのか。またどうすれば妊娠中の便秘が改善しやすくなるか見ていきましょう。
妊娠中は妊娠維持のために、女性ホルモンのバランスが非妊娠時にくらべて大きく変化します。
そのなかでも分泌が増加するプロゲステロン(黄体ホルモン)は、
◆受精卵の着床や妊娠維持に大切な子宮内環境をもたらすため
◆妊娠中に胎児へ栄養がより行き届くようにするため
◆腸から栄養を血液に吸収できるようにするため
大腸の動きをゆっくりする働きがあります。
また体内に水分を蓄積しようとする働きもあるため、腸内の便に含まれる水分量が減って硬くなることで便秘になりやすくなります。
また臨月に近づくにつれ骨盤腔は拡がりますが、大きくなった胎児により子宮は引き伸ばされ、子宮の後ろに位置する腸が物理的に子宮により圧迫されやすくなるため、さらに便秘になりやすいといえます。
つわりにより経口による水分摂取が難しくなると、腸内が急激な脱水状態となり便秘傾向になります。
また全身の脱水症状のひとつとして涎(よだれ)がでることで、経口で水分を摂取するのが難しくなる妊婦さんもいます。この場合は早めに点滴による水分とビタミンなど栄養の補液をする必要があります。
また妊娠中期以降には大きくなった子宮が横隔膜や胃を圧排するため、つわり様の症状を感じる場合もあります。
臨月に近づくにつれ大きくなった子宮の重さや体の浮腫みから歩行がつらくなりやすい妊婦さんの場合、歩行による腸への刺激が低下し、腸の動きが鈍くなることがあります。
また最近は、マタニティライフ中の緊張感やストレス・不安にうまく対応できず眠れなくなる方も少なくありません。
怒りや悲しみ、不安などは腸の動きを過活動にしたり(下痢になる)、慢性的に鈍らせ便秘傾向になったりと、腸の動きはは精神的な要因から影響を受ける事もあります。
落ち着く音楽や気分転換をして心身をリラックスさせることが大切です。ストレスは出来るだけ溜めないように心がけましょう。
一方で睡眠直前までの携帯やパソコンによる交感神経の刺激により自律神経のバランスが乱れやすくなります。
その結果、副交感神経優位時に活性化する排便反射が交感神経により抑制的に働き便秘傾向になります。
体表面積が増えて冷えやすい妊婦さんは、自律神経のアンバランスにより、さらに骨盤周囲の筋肉であるお尻や太ももなども冷え、骨盤内の特に子宮そのものが冷えることで、隣接する大腸を冷やして動きを鈍らせ便秘を招きやすくなります。
女性ホルモンの影響や自律神経のアンバランス、物理的に大きくなった子宮による物理的な大腸の圧迫に加え、臨月が進むにつれ児頭が下がってくるため残便感もでやすくなります。
そのため妊娠中は生活習慣や程度な運動・睡眠の質の見直しなど、大腸の働きを外からサポートしてあげる必要がでてきます。
起床後や腹部の冷えを感じるときは、白湯に自然塩をひとつまみ入れて胃腸をゆっくり温めることで、大腸の動きを活発化します。
また白湯を飲む前に、白湯で温まったカップで胸の真ん中辺りのダンチュウのツボを温め刺激することで、胃腸にこれから白湯が入る指令が伝えられると同時に、精神的な安心感も得やすくなります。
便秘やその他マタニティライフで不安やイライラが募っている時に、効果的なリセット法です。
浮腫みやすい方は水分量を多くすると、より浮腫みを感じやすくなるため、まずは白湯や常温の飲物の摂取を心がける様にし、夏季は冷たいものや甘味の飲物の一気飲みは避ける様にしましょう。
マグネシウムはミネラルの一種です。マグネシウムは便の水分量を増やし柔らかくする働きがあり、便秘薬の中にも含まれています。
便の中の水分量が増え膨張することで、腸を内側から刺激し、排便が促されやすくなります。
マグネシウムを多く含む食材として、ひじき・あおさ・天草(寒天)・わかめ・めかぶ・オクラ・雑穀・味噌・デーツ・アボカド・いりごま・くるみ・木綿豆腐・ひまわりの種・カカオニブなどがあります。
食物繊維は食品の中に含まれる成分のうち、体内の消化酵素で分解されないものを指します。
その中でも不溶性食物繊維は、水に溶けずに胃腸で水分を吸収し便の水分量を増やしたり、有害物質を便に吸着させ排泄を促す効果も期待できます。
不溶性食物繊維を多く含む食材としては、豆類・いも類・きのこ類がなどがあります。どちらも食材が一食に使われる量を考慮して献立を立ててみてください。
また便秘や浮腫みでカラダが重く食事を作るのが億劫になりがちな時は、お味噌汁など発酵食品としてしられる日本の伝統食だけでも腸内環境が整いやすくなります。
便秘が胎児の成長・発達に大きく影響する報告はありませんが、腸内環境を整え栄養を母体がしっかり吸収できることは、母子ともに心身のバランスが整いやすくなります。
大腸の反射区である太ももの外側を刺激してあげることが便秘の解消に繋がりやすくなります。
座位で気持ちいい程度に手で刺激してあげたり、テニスボールなどでマッサージすることで腸の動きが活性化しやすくなります。お腹が大きくなりつらい時は、仰臥位で行っても大丈夫です。
また親指の付け根にある合谷を刺激することも便秘解消に効果的です。
お腹が大きくなり体の前面が引き伸ばされるため、後面の背中や腰、お尻の筋膜や筋肉が引っ張られやすくなります。ひとによっては足の裏まで張ってしまう事もあります。
大きいお腹で重心をしっかりとりながら、特に背骨の周りの筋肉を緩めて腸の動きを活性化するために適度なウォーキングが効果的です。ペンギン歩きの様にガニ股歩きしないこともポイントです。
軽い家事や掃除の上下運動もこまめに行うことも大切です。
つわりのしんどさや、上の子の子育て中の妊娠中で自分の時間があまりとれない時はどうしても時短でシャワーで済ましてしまう妊婦さんも多いです。
つわりの時はとくに下半身が冷えているので、体質改善目的も含めて湯船にしっかり浸かりましょう。冷えの改善やリラックス効果で便秘の解消に繋がりやすくなります。
またマグネシウムを湯船にいれて皮膚からマグネシウムを吸収させることで、体の芯から温まる効果があります。
自律神経のバランスを整えるためには、睡眠の質向上が欠かせません。深いゆったりとした呼吸で体内を温め、ほぐしながら入眠するために、眠前の携帯やパソコンによる目からの刺激は出来るだけ控えましょう。
市販の便秘薬やお茶の中には、腸を刺激するタイプのものもあります。
腸と子宮は連動しているので腸への刺激が強すぎると、子宮が張ってしまうことがあります。切迫流産や早産を誘発しないように、安全のため必ず妊婦健診で医師に相談するようにしましょう。
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