babycoオンラインコンテンツディレクターであり、雑誌・書籍の編集者。カナダで短期大学、映画制作専門学校卒業後、新聞記者、ラジオDJ、TVドラマの編集など多様な分野の知識を得て帰国。帰国後は雑誌編集を中心に活動し、広告案件においても企画・コンセプト立てから担う。ライフスタイルを得意とし育児媒体には20年携わっている。
授乳の間隔はどれぐらいが基準なのでしょう。
新生児のころは頻回授乳でと言われているけれど、どれぐらいのペースが基本なのかな?
すぐ泣いて母乳をほしがるけれど、今の間隔であっているのかな?
そんな不安を抱えているママへ
助産師が授乳のタイミングや間隔の見極め方、赤ちゃんのサインについてお答えします!
桶谷式母乳相談室にも、そんなお悩みをもっているママがいらっしゃいます。
新生児のころは頻回授乳が基本なので、産後、出産した産院などで「赤ちゃんが泣いたら授乳してね」と言われたことがあるママは少なくないでしょう。
頻回授乳とは、赤ちゃんがほしがる度に授乳をすることですが、実際に赤ちゃんが泣いて欲しがっているのかな?と授乳をしてみると、なぜかうまく授乳できない、赤ちゃんが大泣きしてうまく乳首をくわえられないといったケースも多く見受けられます。
じつは、授乳は赤ちゃんが泣いてからでは遅いのです!
では、授乳のタイミングはどうつかめばいいのでしょう。
赤ちゃんのサインを知って、授乳間隔を掴めるようになるには、赤ちゃんの覚醒状態(かくせいじょうたい)を知ることが第一です。
覚醒状態とは、
目覚めている状態。日常生活ではそれほど問題とならないが、睡眠障害の診断時に客観的な判定が必要となる場合は睡眠ポリグラフィー検査を行う。脳波にアルファ、ベータ波があらわれ、筋肉が活動し、眼球が急速運動したりまばたきをするという特徴が睡眠ポリグラフ記録にみられるときの状態。
引用元:weblio辞書
を言います。
ちょっと難しそうですが、つまり、目が覚めている状態のことです。
赤ちゃんの行動は、大きく分けると
□ 睡眠
□ 覚醒
□ 啼泣(ていきゅう)声をあげて泣く
の3つに分けられますが、これらのようすを見極めて、よきタイミングで授乳ができるといいというわけです。
そんな覚醒状態(睡眠・覚醒・啼泣)について、詳しくみていきましょう。
赤ちゃんの覚醒状態は、次の6つのState(ステート)に分かれます。
参照:Brazelton新生児行動評価より
State1
目を閉じた規則正しい呼吸での深い眠り
State2
目を閉じた浅い眠り
目は閉じているが眼球が動いているようすがしばしば見られる
State3
眠そうな半居眠り状態(うとうとしている)
State4
輝きのある目つきをした敏活な状態
静かに起きている
State5
目は開けている、四肢の運動が活発にみられる、ぐずって声を出す
State6
泣いている
赤ちゃんのことをよく見守り観察してみると、この6つの違いがわかってくるようにりますよ。
睡眠には深いノンレム睡眠と浅い睡眠レム睡眠があります。
新生児は眠りの浅い時間が多いのが特徴で、睡眠時間のうち、レム睡眠の割合は大人が 15~20%、 赤ちゃんはおよそ 50%と言われています。
よく聞かれる授乳中のママたちのエピソードに
といったことがありますが、これはまさに赤ちゃんの眠りの浅さのあらわれですね。
ですから、特に新生児のころは、赤ちゃんが長時間ぐっすり眠らないということを心配する必要はありません。
2〜3ヶ月、4〜5ヶ月と、月日が経過するにつれまとまって眠るようになります。
そうした赤ちゃんの生活リズムのなかで、
とされています。
授乳に適したタイミングは、ステート3〜5なので、赤ちゃんが寝起きでまだうとうとしているなぁ、というときに授乳をしてみるのも一つの手です。
ほかにも、こんなようすが見られたら授乳してみましょう!
<赤ちゃんの授乳サイン>
□ 吸うような音を立てたり、吸っているようす
□ むずがる
□ 舌を出す
□ 鼻をならしたり、クーハーといったやわらかい声を出す
月齢が進むと
□ 手を口にもっていく
□ 手や足をにぎりしめる
といった様子もみられるでしょう。
また、ステート3になる前の1と2では授乳やケアをしないようにします。
ステート1の深い眠りは、成長ホルモンが分泌されて身体の発達に大切なタイミングですし、ステート2の浅い眠りは、脳の発達に大切といわれていますので、そっと見守ってあげましょう。
赤ちゃんがギャンギャンと大泣きしていると、口は大きく開けているので一見すると授乳しやすそうですが、じつは舌が上がっていて、しっかりと乳頭をふくむ(くわえる)ことができません。
\関連記事/
上手なふくませ方はこちら!
<助産師監修>授乳でうまく吸わせる方法〜ラッチオンとふくませ方
同じ泣いている状態でも、赤ちゃんがぐずって鼻で泣いているステート5のころは、まだ舌が下がっているので乳頭をくわえることができます。
また、ママも大泣きされてしまうと気持ちがあせってしまうので、落ち着いた授乳がなかなかできないものです。
どういったタイミングだったらゆったりとした気持ちで授乳ができるか考えてみると、ステート3ぐらいから準備を初めて、ステート4、5までには授乳をするのがいいということが、ママも授乳生活のなかで実感できるようになるでしょう。
参照:厚生労働省令和元年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「『授乳・離乳の支援ガイド』の普及啓発に関する調査研究」授乳のギモン解消ガイド
授乳の間隔や1日の回数は赤ちゃんによっても異なりますが、おおよその目安を知っておきたい
というのもママの心理ですよね。
厚生労働省で紹介している頻度の目安は
授乳間隔:数分〜5時間程度
授乳回数:1日8〜12回以上
1回の時間:数分〜30分程度
1回で飲む量:20〜150g
授乳回数は1日14回という場合もあります。特に新生児のうちは一日中くわえてがっている子もいます。お母さんやおうちの人の心の準備が必要かもしれません。
幅がありすぎてもっと具体的に知りたい! と言うママもいるかもしれませんね。
でも、赤ちゃんの成長具合もふくめて個人差があり本当にひとりひとり違うので、自分たち親子にあった授乳の回数や間隔について知りたい場合は、母乳相談室で個別相談をするのが確実です。
授乳の基本的な考えは「赤ちゃんがほしがるときに、ほしがるだけ」あげることですが、新生児のころはとても頻繁に母乳をほしがるでしょう。
1〜3時間ごとに1日8回以上、ほしがるだけ母乳をあげることこそが頻回授乳です。
頻繁にほしがっていた赤ちゃんが、おおよそ3時間おきの授乳ペースをつかめるようになるのは、一般的に生後3ヶ月ごろ。
ママのおっぱいが出る感覚と赤ちゃんの飲み方が一致して、授乳の間隔が約2〜3時間くらいに落ちついてくるのもこの頃です。
新生児
授乳間隔:2〜3時間
授乳回数:10〜12回
1回の時間:30分程度
新生児の頃は一般的に、2〜3時間と言われていますが、頻繁にほしがるなら1時間であげても大きな問題にはなりません。
頻繁に赤ちゃんに吸ってもらうことで、母乳分泌も増えてくるようになりますよ。夜間の授乳はつらいと感じることもあるかもしれませんが、明け方にかけての時間はママのホルモン分泌が盛んになる時間帯ともされているので、「母乳の量を増やせる!」と考えて、ちょっとだけ頑張ってみてください。母乳量が増えてしっかり飲めるようになると徐々に3時間おきに向けて安定してくるケースが多いですよ。
生後2〜4ヶ月
授乳間隔:2〜3時間
授乳回数:8〜10回
1回の時間:15〜30分
母乳の分泌量が増えはじめると、1回での飲む量も増えるので、徐々に間隔があいて、その分回数も減ってきます。
1回の授乳時間は個人差がありますが、新生児のころと比べて短くなるでしょう。
左右の乳房をバランスよくあげるようにします。出にくい方を先にあげたり、毎回あげる左右の順番を変えるなどして工夫をしましょう。
安定してきたら、3時間おきの授乳を基本にしていきましょう。
生後5ヶ月〜
授乳間隔:3時間
授乳回数:8回
1回の時間:15〜30分
このころになると、1回の量が増えるので夜はまとまって寝てくれるからと夜間の間隔をあけたくなるママもいるようですが、母乳分泌のことを考えると夜間断乳などはせずに、夜も3時間ごとに授乳をすることが理想です。
もちろん、ママの体調も大切ですから体調を考えながらバランスをとっていきましょう。
また、生後6ヶ月ぐらいになると離乳食もはじまりますが、離乳食が3回食になっても赤ちゃんの栄養摂取は母乳が中心ですから、離乳食の後にほしがるだけ母乳をあげましょう。
1回の授乳時間がグッと短くなるお子さんもいますよ。
月齢別の目安を紹介しましたが、数字だけに頼らず、赤ちゃんのようすを見て判断することが大切です。
その判断基準の参考に「赤ちゃんの満足サイン」についてもご紹介しますね。
十分に飲めているようすは次のように見られます。
<赤ちゃんの授乳満足サイン>
□ 1日に少なくとも8回授乳していて1回に飲みたいだけ飲んでいる
□ 肌にはりがあって、いきいきとした元気なようす
□ 1日に色の薄い色をした尿で5〜6枚おむつが濡れている
母乳が足りているのかな? と不安になることもあるかもしれませんが、おしっこがちゃんと出ていて、元気そうなようすが見られれば大丈夫ですよ。
体重の増加も授乳が足りている判断になりますが、体重が増えないからと心配しすぎる必要もありません。
「成長曲線」よりも体重が増えていないことが気になる場合は、こちらの記事も合わせて読んでみましょう。ミルクよりも母乳育児の場合は体重の増加がゆるやかなことがわかります。
\関連記事/
<助産師監修>赤ちゃんの体重が増えなくても気にしないで!〜母乳育児で陥りがちな不安
1回に目安の量を飲まないからと心配する必要もありません。
大人もたくさん食べるときや食が進まないときがあるように、赤ちゃんも毎回同じ量を決まって飲むわけではありませんから、1回の量よりも1日トータルで足りていそうだな、上記のような満足そうなようすがちゃんとみられるな、と言う場合は心配しすぎないようにしましょう。
赤ちゃんが泣くのはおなかがすいたサインのひとつですが、生まれてすぐの新生児のころや生活リズムが安定する前は、泣いてから授乳しようとするとみるみるうちに泣き疲れてかえって授乳間隔のリズムが掴めなくなってしまいます。
覚醒状態を理解し、泣き出す前に授乳をするように心がけましょう。
そして、生後3ヶ月を目処に授乳間隔が3時間ごとになることを頭にインプットして、徐々にそこに向かっていけばいいなと焦らずに毎日の変化を赤ちゃんを見守りながら柔軟に授乳してあげてくださいね。
ママもゆったりとした気持ちで授乳をむかえた方が、ストレスもたまらず母乳分泌にもきっといいはずですよ。
ママの母乳育児に関する悩みには
■おっぱいが足りているか不安
■おっぱいが痛い、これって乳腺炎?
■赤ちゃんがうまくおっぱいを飲めていないみたい
■断乳をどうやって進めたらいいの?
など、たくさんありますよね。
こうした母乳育児全般の悩みを解決してくれる桶谷式の相談室。一人ひとりに合わせた母乳育児のアドバイスをしてくれます。
今回ご紹介した「授乳の間隔や量を具体的に知りたい」といったお悩みも、赤ちゃんとママによって状況は少しずつ異なります。助産師さんに直接みてもらえる個別相談なら、自分たち親子にあった解決がみつけやすいですね。そうした一人ひとりに合わせた母乳育児に答えてくれるエキスパートです。
おっぱいが出にくいという悩みには、オリジナルの乳房マッサージで柔らかくしておっぱいを出やすくしてくれたりもします。
直接悩みを相談したい!というママは、全国約330箇所にある「桶谷式母乳育児相談室」に、気軽に相談することもできますよ。
ひとりで抱え込まずに、以下「OPPA!」 から気軽にご相談ください。
桶谷式母乳育児とは助産婦・桶谷そとみ(1913-2004)が考案した乳房マッサージと母乳育児方法で正式には「桶谷式乳房管理法」と言います。
第2次世界大戦の最中、母乳が足りず栄養状態が悪いために命を落としていく赤ちゃんを目の当たりにするというつらい経験から、桶谷そとみは「母乳は出るものであり、出せるようにしなければ」という思いで試行錯誤の末、お母さんに苦痛を与えず乳房の調子を整える独自のマッサージ方法を確立していきました。
また、お母さんの乳房の調子や体調が良好であること、つまり心身ともに健康であることが、その母乳を飲む赤ちゃんの健康や順調な発育につながるという「母子一体性の理念」を提唱し、哺乳動物である人間がもつ本来のリズムを大切にすることを訴えました。
現在は、桶谷そとみの意志を引き継いだ後進達によって、桶谷式母乳育児推進協会を発足させ、桶谷式乳房管理法の正しい伝承と桶谷式乳房管理士の育成、母乳育児支援活動を行っています。現在の会員数は550名。全国の助産院(母乳相談室)をはじめ、病産院で皆さまの母乳育児をサポートしています。
監修:公益社団法人桶谷式母乳育児推進協会
イラスト/ふみ