babyco編集長。書籍編集者。
新潟の山奥で肉用牛を飼育しながら、野菜やくだものを育てる祖父母のお手伝いをきっかけに、丹精込めて作られた食材のおいしさ、食べることや命の大切さを学ぶ。特集記事、離乳食やママごはんなど幅広く担当。ママ・パパの気持ちに寄り添った記事の制作を心がけている。
妊娠中や産後の体調不良、マタニティブルーや産後うつなどの原因に「ホルモンバランス」があります。こうした心身の不調は、ホルモンバランスの乱れではなく大きな変化によって起こる生理的なものなのです。
ホルモンバランスの正しい知識や心身の不調を改善する対策を知り、自分の心や体をリカバリーしていきましょう。産婦人科医であり、3人のお子さんを子育て中のママ女医 ちえこ先生に聞きました。
産婦人科医師。3児の母。婦人科診療を行う傍ら、産婦人科医とママの立場で、女性の体や妊娠・出産のお話を中心にYoutubeで情報発信している。チャンネル登録者数は14万人超え。著書に『子宮にいいこと大全 産婦人科医が教える、オトナ女子のセルフケア』(KADOKAWA)など。
ママ女医ちえこチャンネル(Youtube)
女性の体に関するお話でよく登場する“ホルモンバランス”という言葉。
聞いたことはあるけれど、具体的に私たちの体のどんなホルモンのこと? バランスって?と詳しくは知らない方もいるのではないでしょうか。
女性の体のことでホルモンバランスについてふれる場合、多くは、卵巣から出ているエストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンの分泌バランスのことを指します。
エストロゲン
別名「卵胞ホルモン」。子宮の内膜を分厚くするなど、しっかりと発育させて妊娠できる状態にする働きがある。女性らしい体づくりに大切なホルモンで、肌や髪のツヤをよくしたり、精神状態を安定させたりする。
プロゲステロン
別名「黄体ホルモン」。子宮の内膜を安定させて、受精卵がきたときにしっかりと着床しやすい状態にする働きがある。乳腺を発達させたり、水分や栄養を溜め込んだりする。
このエストロゲンとプロゲステロンがバランスよく分泌されている状態が「ホルモンバランスが整っている」状態です。
ホルモンバランスは“整える”“乱れる”といった表現とセットで解説されることが多いので、ホルモンバランスが整っている状態の体=女性ホルモンの分泌量が常に一定で変化のない状態とイメージしがちですよね。
じつは、女性の体の変化に合わせて適切にホルモンが分泌される状態が、ホルモンバランスが整っている状態なんです。
女性のホルモンバランスは、次の2つの変化が女性の体に起こるときに大きく変動します。
● 1ヵ月ごとの生理周期による変化
● はじめての生理、妊娠、出産、閉経などの一生涯の変化
自分の体のホルモンバランスを見るときは、この2つの軸で見ることがポイントです。
排卵が起こると、妊娠の準備に必要なプロゲステロンの分泌量が増えます。そして、生理が始まるとプロゲステロンは一気に減少します。
生理が終わったあとは、排卵に向けてエストロゲンの分泌が増加します。
思春期になると女性ホルモンの分泌が増加し始め、はじめての生理を迎えます。女性ホルモンの分泌は20〜30代で安定しますが、更年期に急激に減少し、閉経するとほとんど分泌されなくなります。
妊娠、出産に関しては、妊娠すると、妊娠を維持したり乳腺を発達させたりするためにエストロゲンとプロゲステロンがたくさん分泌されます。そして、出産するとこれらの女性ホルモンの分泌量は一気に低下します。
女性の体では、1ヵ月ごとに生理がくるたびに、そして妊娠や出産を機に、これだけ急激なホルモンバランスの変化が起こっているのをご存知でしたか?
急激な変化が起きるときは、女性ホルモンの分泌量が増えるにしても減るにしても、体や気持ちが不安定になりやすくなります。
生理的なことなので急激な変化から逃げられるわけではないけれど、
・変化のタイミング
・自分の体でホルモンバランスがどう変化しているのか
を知ることが、自分の気持ちや体調との向き合い方のヒントになりますよ。
不規則な生活やストレスなどが影響してホルモンバランスが乱れると、生理が早くきたり遅くきたりと生理周期が乱れたり、無月経や無排卵になったりすることがあります。
また、にきび、肌荒れなどの肌トラブルにもつながります。
気持ちの面では、イライラ、気分の落ち込み、不安感といったメンタルの不調があらわれます。
産後によく見られる「マタニティブルーズ」もイライラ、気分の落ち込み、不安感といった症状があらわれますが、女性ホルモンの急激な低下が原因であると考えられています。
症状の軽い方から重い方まで個人差はありますが、「ちゃんとできていない」と自分を責めがちだったり、赤ちゃんに対する怒りややるせなさを抱いたりするママを多く見かけます。
でも、大丈夫。
その気持ちは、あなたの体のなかで起きているホルモンバランスが影響しているのです。あなたの心が弱いわけではないですからね。
産後のホルモンバランスの変化は、メンタル面だけでなく体へも影響します。
一般的に閉経後の女性が感じるような肌の不調やカサカサ感、エストロゲンの減少による抜け毛といった症状があらわれます。
産後の抜け毛は一気に起こるので「抜け毛が増えた!」とびっくりしますが、妊娠中はエストロゲンが出ることで毛周期が長くなり、抜け毛が減ります。
産後、エストロゲンが減ることで毛周期が元に戻り、どんどん毛が抜けていくように感じるだけなので、一時的な変化なんですね。
そのため「今だけだから仕方がない」と割り切るのもひとつです。
妊娠中~産後の急激なホルモンバランスの変化による心身への影響は、どうにもならないと諦めていませんか?
100%逃げ切れるわけではないけれど、じつは、対策することで少し改善することができます。
自分の体のために、これから紹介する5つの対策を覚えておきましょう。
産後うつに効果があるといわれている
● カルシウム
● オメガ3脂肪酸
を含む食材を妊娠中から積極的に摂りましょう。
- カルシウムを多く含む食材 -
牛乳 チーズ ヨーグルト
小魚 小松菜 納豆や豆腐
- オメガ3脂肪酸を多く含む食材 -
さば いわし 鮭
えごま油 アマニ油 くるみ
これらの食材は、産後も摂り続けるととてもいいですね。
また、ホルモンをしっかりとつくるためにもエネルギーを摂ることを心がけましょう。
エネルギーを摂るときは、糖質から多く摂ろうとするのではなく、良質な脂質やたんぱく質から多く摂ることを意識しましょう。糖質が多いものを食べることで血糖値が急激に変動することが、自律神経を乱す原因につながるからです。
食材による対策以外に、妊娠中や産後の気を整えてくれるような漢方を用意しておき、気になったときにしっかり摂るのもいいでしょう。漢方は産婦人科で保険診療で処方してもらうこともできます。
- 産後うつ対策におすすめの漢方 -
● 芎帰調血飲…産後のストレスや不安感をやわらげる
● 女神散…妊娠中や産後の不安や不眠に
● 抑肝散加陳皮半夏…産後のイライラなど
人間は“誰かに触れる感覚”と“誰かに触れられている感覚”の両方を感じることで、脳に豊かな刺激が届き、安心できます。
妊娠中や産後に孤独感で不安になったらセルフハグをしてみましょう。愛情ホルモンであるオキシトシンが分泌されて、自分は大切な存在なのだと愛しく思えます。
ぬいぐるみ、クッション、毛布などのやわらかくてふわふわしたものを抱きしめるだけでもOK。
・朝起きて太陽の光を浴びる
・できるときに運動をする
・できるときに寝る
など、がんばり過ぎない範囲で、自律神経のバランスが整う生活を心がけましょう。ホルモンバランスの変化は避けて通れませんが、自律神経を整えることで体の状態をよくしていくことができます。
ストレスがたまらないようにしたり、自律神経を整えたりするためには、ひとりで抱え込まずに誰かの手を借りることも大切です。
産後ケアサービスは、ワンオペ育児などよっぽどSOSの状況じゃない限り利用するのは甘えなんじゃないか?と躊躇してしまうママもきっといますよね。
ですが、これから子育てをがんばっていく自分の体のためにも、積極的に利用していいんですよ♪
昔は、近くにおじいちゃんおばあちゃんや親がいて、助けを借りながらみんなで子育てする環境でした。しかし、現在は核家族化で、パパがなかなか仕事から帰ってこない、赤ちゃんは全然しゃべれないとなると、それだけでストレスが溜まりやすくなります。
ヘルパーさんにちょっと話を聞いてもらったり、「私が見ているから寝てきていいよ」と休息の時間を1時間でも2時間でももらえたりするのは、ママの気持ちの回復にとっていい方向に働きます。
産後ケアサービスってどういうものだろう?
と気になるママは、こちらの記事もあわせてチェックしてみてくださいね。
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